物体がその内部にもつエネルギー。物体は一般には、それが全体としてもつ並進および回転の運動エネルギー、全体としてもつ力学的・電気的な位置のエネルギーをもっている。たとえば、物体が重力場の中にあれば、物体はMgh(Mは物体の質量、gは重力定数、hは地表からの高さ)の力学的位置のエネルギーをもっている。また、物体が電界の中にあるとき、物体のもつ電荷をQ、物体の位置における電位をVとして、物体は(1/2)QVという電気的位置のエネルギーをもっている。物体がもつ全エネルギーは、これらのいわば外部的エネルギーと物体が本来その内部にもつ内部エネルギーとの総和である。物体が全体としてもつ運動エネルギーおよび力学的位置のエネルギーは力学において取り扱い、物体が全体としてもつ電気的位置のエネルギーは電磁気学において取り扱う。物体を構成する物質の性質を議論しようとする熱力学、物性論では、物体のもつエネルギーとして内部エネルギーだけを考えれば十分である。
内部エネルギーはエネルギーであるから、これについてはエネルギー保存則が成り立つ。これが熱力学では熱力学第一法則とよばれているものである。すなわち、物体の内部エネルギーは外から加えられた仕事および外から加えられた熱だけ増大する。この仕事には、一般的には、力学的なものだけでなく、電気的、磁気的、化学的なものも存在する。内部エネルギーの本質は微視的にでないと理解しにくい。すなわち、物質の内部エネルギーとは、この物質を構成する微視的粒子のもつ運動エネルギーおよびポテンシャルエネルギーの総和である。
[沢田正三]
物質のもつエネルギーのうちで,その全体としての運動に関する運動エネルギーを差し引いた残りのエネルギー。これは,その物質の状態を表す熱力学的な状態量である。熱力学第1法則によると,内部エネルギーの増加分⊿Uは,外部からその系になされた仕事Wと,外部から加えられた熱量Q,および質量の増加Mによる等価なエネルギーの増分Mc2との和で表される(cは光速度)。すなわち,
⊿U=W+Q+Mc2
が成立する。
→自由エネルギー
執筆者:鈴木 増雄
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熱力学第一法則にもとづいて,系の状態すなわち系の圧力,体積,温度によって決まる系のエネルギーをいう.記号UまたはE.その絶対量よりも,状態変化に伴う変化量が重要であり,またそれは測定可能な量である.いま,系が外界より熱量qを吸収し,wという仕事をしたときに伴う内部エネルギー変化ΔUは熱力学第一法則に従いq + wに等しい.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…このとき, ⊿U≡U2-U1=W+JQ ……(1) が成り立つ。熱力学の場合は対象とする物体全体としての運動はふつう考えないから,U2-U1は物体の内部エネルギーUの変化を表す。ただし内部エネルギーというのは熱運動をしている物体中の原子やイオンの力学的エネルギーの総和(イオン間の電磁気的エネルギーも含める)のことである。…
…熱伝導率および粘性率は温度とともに増加するが,圧力にはあまり依存しない。
[内部エネルギー]
理想気体の内部エネルギーは,体積にはよらず,絶対温度に比例する。したがって,1molの理想気体の内部エネルギーUは, U=CvT ……(2) と表される。…
…一方,ボイル=シャルルの法則により,1molの理想気体に対してpV=RTの関係が成り立ち(Rは気体定数,Tは絶対温度),これと(1)式とを組み合わせると,の関係が導かれる。(2)式の左辺は,気体分子の全運動エネルギーを表し,1molの理想気体がもつ内部エネルギーに等しい。この関係からエネルギー等分配の法則を導くことができる。…
…さらに,20世紀にかけてJ.C.マクスウェル,L.ボルツマン,J.W.ギブズらによって気体運動論,そして統計力学が形成され,物質を構成する原子・分子の力学から熱現象を理解することが可能となった。エネルギー統計力学
[内部エネルギーと熱]
ふつうわれわれが扱う物体は非常に多くの微視的な粒子(原子あるいはそれを作っている電子と原子核)から構成されている。そのため物体は静止しているときでも微視的な粒子の運動エネルギーや,粒子間の力に応じた位置エネルギーをその内部にもっている。…
※「内部エネルギー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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