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彗星・小惑星探査機 すいせいしょうわくせいたんさき

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

彗星・小惑星探査機
すいせいしょうわくせいたんさき

彗星と小惑星、およびそれらの周辺環境を探査する宇宙機。
 彗星は太陽から遠い位置にあるところでは低温のため、その中心である核はすべて凍りついているが、彗星が太陽に近づくと太陽から放射される熱によって表面が蒸発し始める。それに伴って核の周りを球状に覆うガスが発生する。これをコマといい、コマは太陽からの放射圧と太陽風により太陽と反対の方向に尾が形成される。
 1978年にアメリカが打ち上げた彗星探査機アイスICEは、1985年にジャコビニ‐ジンナ彗星に7800キロメートルまで接近して観測を行った。日本、ソビエト連邦(ソ連)およびESA(イーサ)(ヨーロッパ宇宙機関)は、1986年のハリー彗星の地球接近にあわせて、それぞれ探査機を打ち上げた。アメリカはアイスの軌道を修正して1986年にハリー彗星から320万キロメートルまで接近した。ソ連は1984年にベガVega1号および2号を打ち上げた。2機はともに金星観測を行った後、1986年にハリー彗星へそれぞれ8889キロメートルおよび8030キロメートルまで接近して観測を行い、ハリー彗星の軌道決定を行った。日本は1985年(昭和60)に「さきがけ」および「すいせい」を打ち上げ、1986年にそれぞれハリー彗星へ700万キロメートルおよび15万キロメートルまで接近して彗星周辺気体層、プラズマ、磁場などの観測を行った。ESAは1985年にジオットGiottoを打ち上げ、ハリー彗星へわずか670キロメートルまでに接近して彗星の固体の核の撮影に初めて成功、核の構造を解明した。1999年にアメリカが打ち上げたスターダストSTARDUSTは、2004年にビルト2彗星に接近して彗星の周りの微小物質(ちり)をカプセルに採取し、地上に向けてカプセルを投下し、回収された。
 太陽系生成論の研究や将来的な資源利用への布石として、小惑星探査が進められている。ほとんどの小惑星は木星軌道と火星軌道の間に存在し、太陽からの距離が約2~4天文単位の範囲に集まっている。この領域を小惑星帯(asteroid belt)とよぶ。軌道が確定して小惑星番号が付けられた天体は30万個以上あり、直径1キロメートル以下の小惑星については未発見のものが数十万個あると推測されている。小惑星探査機としては、アメリカが打ち上げた木星探査機ガリレオがスイングバイ航行の途中、横切った小惑星帯において1991年に小惑星ガスプラに接近して詳細な画像を撮影したのが歴史上初めてである。その後ガリレオは木星に向かう途中、1993年に小惑星イダに接近し詳細な画像を撮影した。このときイダを周回する小さな「月」、ダクティルを発見した。1996年、アメリカは小惑星エロスに向け探査機ニアNEARを打ち上げた。ニアは2000年にエロスに接近して詳細な画像を撮影し、翌2001年エロスに着陸して地表観測を行った。これが史上初の小惑星への着陸となった。1998年にアメリカは先端宇宙技術の実証を目的とするディープスペース1号(DS-1)を打ち上げた。同機は、史上初のイオンエンジンによる長期間推進に成功し、1999年に小惑星ブライユに、2001年には彗星ボレリーに接近した。
 日本では2003年(平成15)に宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))が日本初の小惑星探査機「はやぶさ」(MUSES-C)を打ち上げた。「はやぶさ」は2005年に小惑星イトカワ(1998SF36)に着陸して表面物質を採取し、2010年に地球大気圏に再突入し、オーストラリアの計画地点に軟着陸(サンプル・リターン)することに成功した。
 2004年にESAは彗星の探査を目的とするロゼッタ探査機を打ち上げた。同機は2008年に小惑星シュティエンスに、2010年に小惑星ルテティアに、2014年にチュリュモフ‐ゲラシメンコ彗星に接近して彗星表面のマッピングを行い、また着陸機フィラエPhilaeを彗星に着陸させ表面の成分分析のデータを収集した。
 2005年、アメリカは彗星核に発射体を衝突させて飛散する内部物質の観測を目的とした、ディープインパクト探査機を打ち上げ、成功させた。さらに2007年にアメリカは、準惑星ケレスおよび小惑星ベスタの探査を目的とするドーン探査機を打ち上げた。同機は2011年に小惑星ベスタに到達して2012年まで周囲を観測し、軌道を変更して2015年に準惑星ケレスに接近して観測を実施。2016年6月末に主要ミッションを終え、延長ミッションに移行した。
 JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」(Hayabusa2)は、「はやぶさ」の後継機で2014年に打ち上げられた。C型小惑星「Ryugu」(リュウグウ)に到着するのは2018年なかばで、1年半ほど小惑星に滞在して2020年末ごろに地球に帰還する予定である。[森山 隆]
『宮本英昭・橘省吾・平田成・杉田精司編『惑星地質学』(2008・東京大学出版会) ▽川口淳一郎著『はやぶさ、そうまでして君は――生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話』(2010・宝島社) ▽山根一眞著『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(講談社+α文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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