ロゼッタ(読み)ろぜった(英語表記)Rosetta

デジタル大辞泉 「ロゼッタ」の意味・読み・例文・類語

ロゼッタ(Rosetta)

エジプト北部、ナイル川河口のデルタ地帯にある都市。エジプト名ラシードアレクサンドリアの東約65キロメートルに位置する。16世紀から19世紀にかけてエジプト最大の港として栄えた。18世紀末にロゼッタ石が発見され、古代エジプトのヒエログリフが解読できるようになった。オスマン帝国時代の商人の邸宅が多く残っている。
2004年3月にESA(欧州宇宙機関)が打ち上げた彗星探査機。本体と、彗星への着陸機フィラエで構成される。2014年11月にチュリュモフゲラシメンコ彗星にフィラエを投下。彗星表面の着陸に世界で初めて成功した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロゼッタ」の意味・わかりやすい解説

ロゼッタ(彗星探査機)
ろぜった
Rosetta

ESA(イーサ)(ヨーロッパ宇宙機関)が2004年3月にフランス領ギアナからアリアン5ロケットで打ち上げた彗星(すいせい)探査機。ハレー彗星の近接観測に成功した彗星探査機ジオットGiottoの後継機で、彗星への着陸と成分探査を目的としていた。ロゼッタ本体の質量は約2900キログラム、大きさは2.8メートル×2.1メートル×2.0メートル。おもな搭載観測機器は、可視光・近赤外光・紫外光の光学カメラと分光計、彗星から噴き出すガスを観測するマイクロ波サウンダー、彗星の大気や電離層の成分などを観測する質量分析計や圧力センサーなどである。打上げ後、地球および火星による数回のスイングバイ(天体の重力を利用して加速させる技術)を行い、10年の歳月をかけて2014年8月に、目的のチュリュモフ‐ゲラシメンコ彗星に到達した。同年11月に世界で初めて、彗星に着陸機「フィラエPhilae」を着陸させた。フィラエは質量約100キログラム、大きさは1メートル×1メートル×1メートルで、内部温度を測定するペネトレータ、X線分光計、ガスクロマトグラフィーなどが搭載されていた。彗星表面のカメラ撮像や彗星の成分分析を実施したが、日照の状態が悪く、太陽電池に十分に充電ができなかったため通信がとだえた。その後、2015年6~7月に断続的に通信が復帰し、「フィラエ」はその限られた観測時間のなかで、彗星にわずかながら大気があり炭素窒素が豊富に含まれていること、表面には16種類もの有機物が存在することなどを発見した。2016年7月にフィラエの運用は終了した。

 一方、母機のロゼッタは2015年8月のチュリュモフ‐ゲラシメンコ彗星の近日点通過に向け観測を続け、彗星の表面に凍りついた水と考えられる光る領域を発見するなど、水に関しての多くの発見をもたらした。また、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から噴き出す水蒸気は地球の水とは異なった性質をもっていること、彗星の窒素分子を初めて検出したこと、大規模な磁場はないことなど、太陽系の起源や進化の謎(なぞ)に迫る科学的に興味深い成果も明らかにしている。ロゼッタは当初、2015年12月までにミッションを終了する予定であったが、ESAは2016年9月までの延長を決定した。その後ロゼッタは、12年に及ぶ任務の総仕上げとなるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に衝突して着地し、ミッションを終えた。

 ロゼッタの名称は、エジプトのヒエログリフを理解する鍵(かぎ)となったロゼッタ石に、着陸機のフィラエはロゼッタ石のヒエログリフ解読の鍵となったオベリスク発見の地の名に由来する。

森山 隆 2017年4月18日]



ロゼッタ(エジプトの地名)
ろぜった
Rosetta

エジプト北東部、ナイル川デルタの扇端にある港湾都市。エジプト名はラシードRashīd。人口6万5400(2001推計)。デルタ二大支流の一つラシード支流の河口近くにあり、19世紀まで繁栄したが、西方50キロメートルのアレクサンドリアにとってかわられた。現在は地方の商工業中心地で食品製紙工業が立地する。1799年、ナポレオン遠征軍が町の北2キロメートルで要塞(ようさい)を築城中、聖刻文字解読のきっかけをつくったロゼッタ石を発見したことで知られる。

[藤井宏志]

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知恵蔵mini 「ロゼッタ」の解説

ロゼッタ

欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機。アメリカ航空宇宙局(NASA)とESAの共同計画として開発が開始されたが、NASAの離脱により、1992年以降はESAが単独で計画を進めている。2004年、南米のギアナ宇宙センターからアリアン5ロケットによって打ち上げられた。11年より消費電力を最小限に抑えるために休眠状態に入ったが、14年1月に再起動し、同年8月、探査対象であるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着。同年11月、着陸機フィラエ(Philae)を投下し、人類史上初となる彗星への着陸に成功した。フィラエは彗星の探査を行い、ロゼッタは15年末まで彗星上空にとどまって観測を続ける予定となっている。

(2014-11-13)

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デジタル大辞泉プラス 「ロゼッタ」の解説

ロゼッタ

1999年製作のベルギー・フランス合作映画。原題《Rosetta》。監督:リュック=ピエール・ダルデンヌ、ジャン=ピエール・ダルデンヌ、出演:エミリー・ドゥケンヌ、ファブリッツィオ・ロンギーヌほか。第52回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞。

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改訂新版 世界大百科事典 「ロゼッタ」の意味・わかりやすい解説

ロゼッタ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロゼッタ」の意味・わかりやすい解説

ロゼッタ

「ラシード」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のロゼッタの言及

【ラシード】より

…人口3万7000(1966)。ロゼッタRosettaの名でも知られる。ナイル川のラシード(ロゼッタ)支流の出口にあたる重要な港町。…

※「ロゼッタ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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