従容録(読み)ショウヨウロク

デジタル大辞泉 「従容録」の意味・読み・例文・類語

しょうようろく【従容録】

中国代の禅書。6巻。万松行秀ばんしょうぎょうしゅうが、宏智正覚わんししょうがくの「宏智頌古じゅこ百則」に評唱などを加えたもの。特に曹洞宗で重んじられる。万松老人評唱天童覚和尚頌古従容庵録。

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精選版 日本国語大辞典 「従容録」の意味・読み・例文・類語

しょうようろく【従容録】

  1. 中国、元代の禅書。詳しくは「万松老人評唱天童覚和尚頌古従容庵録」。宋代曹洞宗の僧、万松行秀が宏智(わんし)正覚の「頌古(じゅこ)百則」(宏智頌古、古則公案の中から一〇〇を選び、これに頌古をつけてその精神をうたったもの)に、示衆・著語(じゃくご)・評唱を加えたもの。六巻。「碧巖録」とともに禅門宝典といわれ、特に曹洞宗で重んじられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「従容録」の意味・わかりやすい解説

従容録
しょうようろく

中国、元(げん)代の仏書。6巻。曹洞宗(そうとうしゅう)の万松行秀(ばんしょうぎょうしゅう)が、宏智正覚(わんししょうがく)(1090―1157)の『宏智頌古(わんしじゅこ)百則』を自在に評釈した公案集。『碧巌録(へきがんろく)』とともに禅門の双璧(そうへき)をなすという。万松の弟子で、元朝の重臣耶律楚材(やりつそざい)(1190―1244)が、7年間に9回にわたって懇請した結果成立したもので、1224年(元太祖19)楚材が西域(せいいき)阿里馬(ありま)城にて序を寄せている。中国曹洞宗の思想を考えるうえで重要な書であるが、現存のものでは、1607年(万暦35)に校勘出版されたものを最古とし、以後の刊本はこの書を底本とする。江戸時代の天桂伝尊(てんけいでんそん)(1648―1735)による注釈が多く存在するが、万松行秀の書の評釈よりも、『宏智頌古百則』を中心とした注釈となっている。『従容録』が本格的に講じられるのは明治以後で、多くの講義本が成立している。

[永井政之]

『高田道見著『従容録講話』全2冊(1905・仏教館)』『山田孝道著『従容録講義』全2冊(1917・光融館)』『秋野孝道著『従容録講話』全2冊(1922・丙午出版社)』『加藤咄堂著『従容録講話』全6冊(1940・平凡社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「従容録」の意味・わかりやすい解説

従容録 (しょうようろく)
Cōng róng lù

中国,元代の禅文献の一つ。3巻。詳しくは《万松老人評唱天童覚和尚従容庵録》といい,宋の宏智正覚の頌古百則を,万松行秀が燕京北京)の従容庵で講義したもの。円悟が雪竇(せつちよう)の頌古百則を提唱し,垂示,著語,評唱を加えて,《碧巌録》としたのにならう。はじめに,万松老人が門下の湛然居士移剌楚才に与える書と,居士が西域のカラコルムで記す序がある。万松の同種の提唱記録である,《空谷集》《虚堂集》《請益録》と合わせ,四家評唱録とよぶ。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「従容録」の意味・わかりやすい解説

従容録
しょうようろく
Cong-rong-lu

中国,金末から元初の曹洞宗の万松行秀の著。6巻。晩年,従容庵で天童山の宏智正覚禅師の『頌古百則』に評唱を加えて著わしたもの。正しくは『万松老人評唱天童覚和尚頌古従容庵録』といい,『碧巌録』と並ぶ重要な書である。

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