御・馭(読み)ぎょ

精選版 日本国語大辞典 「御・馭」の意味・読み・例文・類語

ぎょ【御・馭】

[1] 〘名〙
① 馬を乗りこなすこと。乗馬術。
※論語徴(1737)九「是古者以御為子弟之職」 〔周礼‐地官・大司徒
② 馬や車をあつかって走らせる人。御者
※太平記(14C後)一三「穆王是を愛して造父(ざうほ)をして御(ギョ)たらしめて」 〔春秋左伝‐成公一六年〕
③ 貴人などのそばにあること。そば近くに仕えること。
※蕉堅藁(1403)題玉畹外史扇「繊絺斁矣、功裘在御」 〔詩経‐鄭風〕
[2] 〘接頭〙 漢語体言の上に付いて、尊敬の意を表わす。
① 特に、天子帝王の行為や持物を表わす名詞の上に付けて用いる。「御衣」「御製」「御題」「御物」
② 一般に、尊敬すべき人の行為、持物を表わす名詞の上に付けていう。「御意」「御慶」「御出」
[3] 〘接尾〙 動作を表わす漢語に付き、その動作が、天子またはこれに準ずる人のものであることを示す。「還御」「出御」「渡御」など。
[語誌](1)漢籍における「御」は種々の意味用法を持つが、日本では敬語に係わるものが主として受け入れられた。
(2)(二)の用法は「御」に天下を統御する人を指す用法があり、それが名詞また動詞に冠されたところから生じたもの。したがって、①のような天子・諸侯に関する事物に冠されるのを本来の用法とする。
(3)(三)の用法もまた、天子の移動存在を意味する動詞用法から派生したもので、多くは移動の意を表わす漢語に付く。

ぎょ‐・する【御・馭】

[1] 〘自サ変〙 ぎょ・す 〘自サ変〙
天皇などがおでましになる。出御する。
古事記(712)「紫宸に御して徳は馬の蹄(つめ)の極まる所に被(かがふ)らしめ」
② 貴人のそば近く仕える。侍(はべ)る。
[2] 〘他サ変〙 ぎょ・す 〘他サ変〙
① (「馭」とも書く) 馬や乗物などをあやつる。
塵袋(1264‐88頃)一〇「御はかならずかしつく詞歟。車を御(キ)すなと云ふ如何
② (「馭」とも書く) 他を意のままにする。統治する。
※古活字本毛詩抄(17C前)三「衆を御する道を俊の大夫に告と云心ぞ」
③ 天皇などがご使用になる。
史記抄(1477)五「衣服を身にきるをも、御すると云ぞ。飲食の口に入るをも、御と云ぞ」
④ 寝所にはべらせる。
※史記抄(1477)五「妃妾の接於寝とて、御手のかかるをも御すると云ぞ」

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