真珠養殖家。三重県鳥羽のうどん屋に生まれた。幼いころから旧藩士や洋学者のもとへ勉学に通い,長じて海産物商となり天然真珠の売買も行い,29歳のとき,英照皇太后の命により真珠を上納した。そのころからシンジュガイの増殖に腐心していたが,第3回内国勧業博覧会(1890)にシンジュガイや真珠を出品し,審査官の動物学者箕作佳吉に出会い,真珠養殖を決意した。鳥羽湾と英虞湾で事業を始めて辛苦を重ねる一方,当局の命令でシンジュガイ,カキ,エビの他県への移殖などにも活躍した。1893年初めて半形真珠を作ることに成功し,次いで1905年に真円真珠の養殖に成功し,明治天皇に献上したという。国内および世界各地の博覧会に養殖真珠を毎回出品するなど多彩な活動を通じて,日本の養殖真珠の名を世界に広め,〈真珠王〉といわれた。また,太平洋戦争に至るまで真珠業界の指導的役割を果たした。
執筆者:植本 東彦
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明治〜昭和期の実業家,真珠養殖家
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(西村はつ)
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養殖真珠の創始者。三重県鳥羽(とば)市のうどん屋の長男として生まれる。幼時より商才にたけ、鳥羽沖に停泊したイギリスの測量船に青物を売り込み、外人相手の商売が有利であることに開眼した。1890年(明治23)、真珠貝(アコヤガイ)の乱獲による絶滅を憂えてその養殖を始め、その後真珠そのものの養殖を思い立ち、箕作佳吉(みつくりかきち)の指導を得て1893年に相島(おじま)(現在の真珠島)において半円真珠の養殖に成功した。1905年には天然真珠と異ならない真円真珠の養殖に成功し、世界中に販路を拡張して、「真珠王(パールキング)」とよばれた。96歳で他界するまで「世界中の女性の首を真珠で締める」ことをモットーとし、真珠の生産販売に尽くした。没後勲一等を贈られた。
[乙竹 宏]
1858.1.25~1954.9.21
明治~昭和期の実業家。志摩国生れ。うどんの製造・販売業を営んでいた音吉の長男。青物行商・穀物小売業のかたわら水産物に興味をもち,志摩郡明神浦で真珠貝の培養を試みた。1893年(明治26)英虞(あご)湾多徳島に真珠の養殖場を設けて,1905年真円真珠を完成,08年特許をとった。その後養殖場を和歌山・長崎・石川・沖縄各県に拡大,御木本真珠(ミキモトパール)は万国博覧会などで世界的な評価をうけ,ロンドン,ニューヨーク,パリなどに直販店を設けて広く海外に輸出され,世界市場の6割を占めるに至った。第2次大戦中は養殖を禁じられたが,50年(昭和25)事業を再開した。
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…この水道の開通で真珠養殖は急速に発展し大中心地となり,タンポと呼ばれる金網の籠をつるした養殖いかだの点綴(てんてつ)する湾の代表的な風景を生んだ。真珠養殖は1893年湾内の多徳島に御木本幸吉が真珠養殖場を設置したのにはじまり,箕作佳吉,西川藤吉,見瀬辰平などの労苦によってつくりあげられた。アコヤガイは水温8℃以下で死滅するため,冬季には湾内の真珠いかだは冷潮をさけて西方の温暖な五ヶ所湾や南方の海山(みやま)町の引本,尾鷲市九鬼方面へ移動する。…
…真珠層以外の物質を多量に含む真珠は一般に価値が低い。
【真珠養殖】
日本では御木本幸吉が1888年ころからアコヤガイにガラス,貝殻などで作った半球形の核を挿入して養殖試験を行い,5年後にようやく5個の半円真珠を得た。その後,1907年に三重県の見瀬辰平は真円真珠の誕生を告げる特許を得た。…
…かつては相(おう)島といわれた。1893年御木本幸吉がここで真珠養殖に成功した。鳥羽市が伊勢志摩国立公園の中心として発達するにつれ,彼は最大の観光資源であった養殖真珠に関する資料を収集し,施設を整備してこの島を観光島に改造した。…
…JR参宮線,近鉄鳥羽線・志摩線が通じるほか,伊良湖(いらご)岬,蒲郡(がまごおり),名古屋へはフェリーや水中翼船が就航し,また伊勢市と結ぶ伊勢志摩スカイラインや,志摩半島を南下するパールロードの起・終点ともなっている。また御木本幸吉誕生の地で,パールアイランドには養殖真珠のモデル工場,真珠博物館,海女実演場がある。【成田 孝三】。…
※「御木本幸吉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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