海上において測量に従事する船。海の深さや海底地形を測るのがおもな作業で、この測量を基にして海図が作成される。また、付随的に海流、水温などの海象に関する調査も行う。これら測量結果は、測定した位置を正確に知らなくては役にたたないので、測量船には複合測位装置(全地球測位システムGlobal Positioning System:GPSに代表される衛星測位装置、ロランCなどの電波航法装置、船速を測定するドップラーソナーなどを結合し、高精度な測定を可能にした装置)、精密電波測位機などの最新の船位測定装置が装備される。操縦性をよくするため可変ピッチプロペラを採用するものが多い。水深を測るにはマルチビーム測深機などの音響測深機や、錘測索(すいそくさく)(鉛のおもりをつけた綱)が用いられる。そのほか深海用音波探査装置、表層探査装置、採泥器、CTD(電気伝導度水温水深計Conductivity-Temperature-Depth profiler)、XBT(投下型自記水温水深計Expendable Bathythermograph)、ADCP(超音波式ドップラー多層流速計Acoustic Doppler Current Profiler)、航用波浪計、測量観測データ収録装置などが装備される。日本では海上保安庁の海洋情報部(旧、水路部)が海の測量にあたり、測量船5隻、測量艇14隻を保有している(2003)。
[森田知治]
『『測量』編集部「大洋を測る日本の測量船、調査船」(『測量』40巻7号所収・1990・日本測量協会)』
三好達治(みよしたつじ)の第一詩集。1930年(昭和5)第一書房刊。1926年から1930年にかけて発表した詩39編を収録。
巻頭に置かれた「春の岬 旅のをはりの鴎(かもめ)どり/浮きつつ遠くなりにけるかも」という「春の岬」は『測量船』の代表作である。短歌形式を踏襲しながら、去りゆく季節を不動な地形「岬」に、季節から遠ざかる人を「鴎」に設定し直して、作品の世界がつくられている。そうすることで、惜春の情という伝統詩歌のモチーフを背後に忍ばせながら、青春時代と決別していく現代の若者の心情を鮮やかに描き出した。「あはれ花びらながれ/をみなごに花びらながれ」の一節で始まる詩「甃(いし)のうへ」にも、舞い落ちる花のなかで語らい歩む乙女らを眺める物憂げな青年像が造型されている。「郷愁」で「蝶(ちょう)のやうな私の郷愁!……。蝶はいくつか籬(まがき)を越え、午後の街角に海を見る……。」と表現した蝶のイメージは、安西冬衛(あんざいふゆえ)が短詩「春」(「てふてふが一匹韃靼(だったん)海峡を渡つて行つた。」)で描いたものを換骨奪胎したものである。その一方で菱山修三(ひしやましゅうぞう)が三好の作品を手本にしたように、同時代のモダニズム詩人が共同しつつ競い合う状況下で、『測量船』は成立した。
[藤本寿彦]
『思潮社編・刊『現代詩読本・新装版 三好達治』(1985・思潮社)』▽『『三好達治詩集』(岩波文庫)』
三好達治の第1詩集。1930年刊。巻頭に〈春の岬旅のをはりの鷗どり浮きつつ遠くなりにけるかも〉という短歌形式の詩をおくが,この旅愁と郷愁の情緒は三好達治生涯の詩心の在りかを暗示している。自由詩形12編,散文詩形26編が混在するのは,現代抒情詩のありうべき姿を探究していたことを示すもので,《測量船》という題名自体がその意欲を端的に表していた。一方,典雅な伝統的詩情を〈甃(いし)のうへ〉〈雪〉〈乳母車〉などに結晶させ,また必ずしも幸せでなかった幼年期以来育ててきた虚無的・厭世的詩情を,おもに散文詩形の作品に盛っている。昭和新詩運動の生んだ代表的作品で,作者を一躍人気詩人にした詩集だった。
執筆者:大岡 信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 押船(プッシャー)は,船首部を艀(はしけ)(バージ)の船尾にはまり込ませ,ロープなどによりバージを連結し押航するもの,引船(タグボート)は,他船を曳引する船で,いずれも低速で大きな推力を得るようコルトノズル推進を採用することが多く,操船性能に優れている。 測量船は音響測深機や船位測定装置などを搭載し,海域の深浅測量を行う。双胴船形式が多い。…
※「測量船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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