心理検査のいろいろ(読み)しんりけんさのいろいろ

家庭医学館 「心理検査のいろいろ」の解説

しんりけんさのいろいろ【心理検査のいろいろ】

◎心理検査(心理テスト)の種類
 心理検査は、教育、医療、司法、産業などの多くの領域で行なわれており、それぞれの領域の特質によって用いられ方も多様です。
 検査目的によって大きく分類すると、知的能力を調べるもの、作業能力を調べるもの、性格傾向をみるものなどに分けられます。
 また、検査対象によって乳・幼児用、児童用、成人用、老人用、男性用、女性用、視覚障害者用などにも分類されます。検査場面の設定による分類としては、集団法と個人法に分けられます。
知能検査とは
 知的能力のはたらき方や知能の発達状況をみる検査法を知能検査といいます。生活年齢と精神年齢の比率を表わす知能指数(ちのうしすう)(IQ)を測定するものとして、鈴木ビネー式、田中ビネー式、ウェックスラー式などがよく用いられます。ウェックスラー式には、成人用(WAIS)、児童用(WISC)、6~16歳の幼児・児童用(WPPSI)の知能検査があり、年齢によって、それぞれが適用されます。そのほか、簡単に知的能力の程度をみる脳研式(のうけんしき)や老人の認知症の観察をする長谷川式簡易知能評価(はせがわしきかんいちのうひょうか)スケールなどもあります。
◎特殊能力検査とは
 特殊能力検査には、記憶のはたらきをみる記銘力検査(きめいりょくけんさ)(数字を使って記銘力を調べる数唱式(すうしょうしき)、ことばの組み合わせの記銘力を調べる対語式(ついごしき)、図形の記銘力を調べるベントン視覚記銘検査(しかくきめいけんさ))、作業能力をみる作業能率検査(計算によって作業能力をみる内田(うちだ)クレペリン精神作業検査法、同じ図形を消していくブルトン抹消検査法(まっしょうけんさほう))、そのほか、職業適性検査(しょくぎょうてきせいけんさ)などもあります。
 また大脳の器質的障害の診断にも用いられることのあるベンダー・ゲシュタルトテストは、図形を書き写していくテストです。このテストは、知的能力の検査でもあり情緒障害の程度もみることができます。
人格検査とは
 人格検査は、性格検査ともいいますが、性格傾向や心の状態を知る検査です。
 大きく分類すると質問紙法と投影法に分けられます。
●質問紙法
 性格や行動上の特徴、心の状態、対人関係のあり方などに関する質問に対して被験者自身が自己評価をして、「はい」「いいえ」の2段階、「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3段階、あるいは5段階などに解答をしていく方法です。その代表的なものとしてつぎのものがあります。
 矢田部(やたべ)=ギルフォード検査(Y‐Gテスト) 性格特性を12の尺度から区切った120項目の質問からできています。被験者は「はい」「いいえ」「?」の3段階に解答し、その結果から、性格特徴を平均型、不安定・不適応・積極型、安定・適応・消極型、安定・積極型、不安定・不適応・消極型の5タイプに分類します。
 ミネソタ多面人格目録(ためんじんかくもくろく)(MMPI) 検査は妥当性尺度(だとうせいしゃくど)(4尺度)と臨床尺度(10尺度)の14尺度に関する550項目の質問からできています。結果は各尺度ごとに採点され、偏差値によって評価されます。この検査は、妥当性尺度が設けられているのが特徴で、自己評価が信頼できるかどうか検討します。臨床尺度の心気症、抑うつ性、ヒステリー、精神衰弱などの10尺度のプロフィールから人格の特徴を解釈します。
 コーネル・メディカル・インデックス健康調査票(CMI) 身体的・精神的健康状態についての質問が200項目ほどあります。その結果から身体的な苦痛感や精神的な疲労感、緊張感の程度をみます。
●投影法(とうえいほう)
 さまざまなとらえ方のできる絵や指示に対して、被験者がどう反応するかを観察することにより、心の状況を判断する方法です。検査の目的も刺激も被験者にとっては質問紙法に比べてあいまいなので、より深層にある人格傾向、内面の葛藤(かっとう)、情緒のあり方を解釈することができます。よく用いられている代表的な投影法検査としては、つぎのものがあります。
 ロールシャッハテスト インクのしみでできた左右対称の10枚の図版を見せて、何に見えるかを自由に連想してもらいます。その内容や説明のしかたから性格傾向や心理状態を解釈します。
 絵画統覚(かいがとうかく)テスト(TAT) 多様なとらえ方のできる18枚の絵を見せて、それぞれの絵について自由に空想の物語をつくってもらいます。その物語作成の過程から、心のなかにある願望、葛藤、対人関係などをみます。
 絵画‐欲求不満テスト(P‐Fスタディ) 日常的な欲求不満場面を描いた24枚の絵からできています。2人で会話をしている絵の空白部分にセリフを入れてもらいます。その反応のしかたから、性格の特徴や内面にある葛藤をみます。
 文章完成テスト(SCT) 「私は……」「私の気持ち……」と書きかけの文章が60ほどあり、自由に書いて完成してもらいます。その完成した文章から、心の状態や対人関係などをみます。
 描画(びょうが)テスト 人物画、樹木画、HTP(家、木、人の3種を一緒に描くもの)などがあり、それぞれ自由に描いてもらいます。絵の構成のしかたや、描いた絵について説明をしてもらったことなどから、性格特徴や心の状態を解釈します。
 これらの検査は、いずれも人格の一側面からの観察をしたものなので、いくつかのテストを組み合わせて多角的、総合的に人格をみることが必要です。また、そうすることで心の状態も理解しやすくなります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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