デジタル大辞泉 「心馳せ」の意味・読み・例文・類語 こころ‐ばせ【心×馳せ】 1 平素からの心の働き。気だて。性質。心ばえ。「常いつも楽しそうに見えるばかりか、―も至て正しいので」〈独歩・少年の悲哀〉2 心配り。「この娘、すぐれたる形ならねど、なつかしう貴あてはかに―あるさまなどぞげにやむごとなき人に劣るまじける」〈源・須磨〉3 深い考え。思慮分別。「―ある人だにも、物につまづき倒るることは常のことなり」〈宇治拾遺・一三〉4 日ごろの心がけ。心構え。「何の―ありげもなく、さうどき、誇りたりしよ」〈源・夕顔〉 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「心馳せ」の意味・読み・例文・類語 こころ‐ばせ【心ばせ】 〘 名詞 〙 ( 「心馳(は)せ」で、心の動く状態をいう )① 性格や性質にもとづいた心の働き。人柄を示すような心の動き。[初出の実例]「昔、山にて見つけたる。かかれば、心ばせも世の人に似ず侍る」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))② 気骨ある心の働き。[初出の実例]「軽皇子、深く中臣鎌子連の意気(ココロハセ)の高く逸れて容止犯れ難きことを識りて」(出典:日本書紀(720)皇極三年正月(岩崎本訓))③ 才知、才覚、気転のほどを示すような心の働き。思慮分別のほどを示すような心の働き。しっかりした心の働き。[初出の実例]「心ばせある少将の尼、左衛門とてあるおとなしき人、童ばかりぞとどめたりける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)④ 常日ごろの心がけを示すような心の働き。心構え。用意。たしなみ。[初出の実例]「えうとみはつまじきさまもしたりしかな。何の心ばせありげもなく、さうどきほこりたりしよ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)「心ばせ有る人そら、物に躓(つまづき)て倒(たふる)る事、常の事也」(出典:今昔物語集(1120頃か)二八)⑤ 情趣を解する鋭敏な感覚。美的理解力を示すような心の働き。[初出の実例]「そのころいたうすいたる者に言はれ、心ばせなどある人の、〈略〉名残思ひいでられんとことばをつくして出づるに」(出典:枕草子(10C終)一八〇)⑥ 相手の身になって何かと心を働かせること。親切な配慮。心づかい。好意。[初出の実例]「いささめに時まつまにぞ日はへぬる心ばせをば人に見えつつ〈紀乳母〉」(出典:古今和歌集(905‐914)物名・四五四)⑦ 事物や行動などに込められている、意義や趣旨。[初出の実例]「昔の髻華(うづ)の心ばせ、木(こ)の花の木を冠(かうむり)の、巾子(こじ)に添へ立て久方の、天の日蔭のかづら垂(し)で」(出典:叢書本謡曲・梅(1765頃)) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例