意気(読み)イキ

デジタル大辞泉 「意気」の意味・読み・例文・類語

い‐き【意気】

事をやりとげようとする積極的な気持ち。気概いきごみ。「その意気で頑張れ」「人生意気に感ず」
気だて。気性気前
「心のむさきを―のわるきなど言ふ」〈色道大鏡・一〉
意地。いきじ。
「張り少くて―も足りず、軽薄なれば」〈難波物語
[類語]士気精気溌剌志気景気元気

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精選版 日本国語大辞典 「意気」の意味・読み・例文・類語

い‐き【意気・粋】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] ( 意気 )
    1. 心に溢れる元気。気合。気概。いきごみ。
      1. [初出の実例]「意気凌雲 風流絶世」(出典:万葉集(8C後)五・八五三・序文)
      2. 「あの抗争の意気をもって起った峠の牛方仲間」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部)
      3. [その他の文献]〔後漢書‐江表伝〕
    2. 気だて。心ばえ。気まえ。気性(きしょう)気風(きっぷ)
      1. [初出の実例]「心のきよきをいきよしといひ、心のむさきをいきのわるきなどいふ」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一)
    3. 意気地のあること。心意気
      1. [初出の実例]「張り少くて、いきも足らず、軽薄なれば」(出典:評判記・難波物語(1655))
      2. 「ぼくはあの時の君の意(イキ)に敬服している」(出典:それから(1909)〈夏目漱石〉一三)
  3. [ 二 ] ( 粋 )
    1. ( 形動 ) 気風、容姿、身なりなどがさっぱりとし、洗練されていて、しゃれた色気をもっていること。また、そのさま。主として近世後期以降発展した一種美的理念。粋(すい)
      1. [初出の実例]「弓張の目元の月や花の顔、恋の台(うてな)が寄かけて、いきとはでとの討手の大将」(出典:浄瑠璃神霊矢口渡(1770)一)
      2. 「粋(イキ)な模様入の半切を拡げて見た」(出典:明暗(1916)〈夏目漱石〉一五)
    2. ( 形動 ) 色事に関すること。また、そのさま。
      1. [初出の実例]「『いきなもんか。夜汽車の寝不足だ』謙作は不愛想に云って」(出典:暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉一)
    3. 遊里、遊興に精通していること。また、さばけた遊興。「いき筋」「いきごと」

意気の語誌

( 1 )本来は[ 一 ]のように「心ばえ」や「気合」などの意味で使われた「意気」が、江戸時代初期から[ 二 ]のように遊興の場での心意気を示す言葉になり、「意気」「意気地」「意気張り」などの形で「粋(すい)」や「通」の精神面を担うようになった。
( 2 )明和の頃から衣装風俗の様態を示す言葉として使われ始め、寛政期になると「いき」のあらゆる様態が出そろった。その精神性が拡散するにつれ、多くの場合、男性に対して使われていたこの言葉が男女の別なく使われるようになり、化政期をすぎると、女性の美しさを表わす言葉の一つとして一種の色っぽさを示すようになる。

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普及版 字通 「意気」の読み・字形・画数・意味

【意気】いき

いきごみ。心もち。〔史記、晏嬰伝〕其の夫、相のと爲り、~氣揚揚として甚だ自得す。にして歸る。其の妻、去らんことをふ。

字通「意」の項目を見る

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「意気」の解説

意気
いき

江戸時代,江戸を中心にみられる美的理念の一つ。江戸深川の遊里(ゆうり)における通言であったものが市中に一般化したもの。「粋」の字をあてることも多く,上方を中心にみられる「粋(すい)」と通うところもある。主として言語・動作・身なりなどの都会的に洗練された美しさをいうときに使われる。のちには女性の張りのある色っぽさをもいうようになり,人情本(にんじょうぼん)に登場する女性たちに典型的に形象化されている。

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世界大百科事典(旧版)内の意気の言及

【いき】より

…ただし“粋”“通”が地域的・時代的限定を伴うのに対して,“いき”は江戸時代を通じて用いられ,現代にも通用している。本来は〈意気〉の漢字があてられるが,後には〈粋〉とも書かれて,より美的な理念となった。〈意気〉は〈意気地〉でもあり,人間が事に処してきっぱりとした決断を示す精神作用を称美したものであるが,江戸初期から遊里などで男女の精神的清潔さを称美する言葉として用いられ始め,以後“粋”や“通”といった理念の中の精神面を形成する重要な要素として存在し続け,江戸後期にいたって,いやみがなく,あだっぽい色気というような意味で用いられて流行語となった。…

※「意気」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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