ことわざを知る辞典 「急がば回れ」の解説
急がば回れ
[使用例] 「いそがば廻れ」といふことは、物毎にあるべき遠慮なり。宗長がよめる、
[使用例] 日本へ帰ろうとすれば、この大西風にさからって、千カイリ以上も、大風と大波とをあいてに、折れた帆柱、ゆるんだ索具の小帆船が、戦わなければならない。遠いけれども、追手の風で、ハワイ諸島のホノルル港に避難して、修繕を完全にして、じゅうぶんの航海準備をととのえて、日本へ帰るのが、いちばんたしかな方法だ。急がばまわれとは、このことだ[須川邦彦*無人島に生きる十六人|1943]
[使用例] あぶない橋は渡らんことだ。急がばまわれという。こうなれば死んだふりをして、相手に油断をさせるほかに手はない。こう、宗助さんは悟った。そうして、人が変ったように働きだした[上野英信*地の底の笑い話|1967]
[解説] 「負けるが勝ち」と同じように、一見矛盾する表現で注意を引き、深く考えさせる逆説的表現です。一六世紀には流布していた古いことわざで、「醒睡笑」が引く古歌「武士のやばせの船は早くともいそがば廻れ瀬田の長橋」が出典とされることがよくあります。しかし、この古歌からこのことわざが生まれたわけではなく、すでによく知られていることわざを詠み込んだものと思われます。
ちなみに、西洋には、ラテン語でFestina lente (ゆっくり急げ)とする類似の表現がありました。
[類句] 急いては事をし損ずる
〔英語〕Make haste slowly.(ゆっくり急げ)
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