急性喉頭蓋炎(読み)きゅうせいこうとうがいえん(その他表記)Acute Epiglottitis

六訂版 家庭医学大全科 「急性喉頭蓋炎」の解説

急性喉頭蓋炎
きゅうせいこうとうがいえん
Acute epiglottitis
(のどの病気)

どんな病気か

 気道の一部である声門(声帯のあるところ)のすぐ上に喉頭蓋という部分があります。急性喉頭蓋炎では、喉頭蓋が急激にはれるため、気道をふさぎ、はれがひどい場合には窒息(ちっそく)に至る危険性がある病気です。欧米においては子どもに多くみられますが、日本では成人例も少なくありません。

原因は何か

 通常は細菌感染が原因で、そのほとんどはB型インフルエンザ菌です。

症状の現れ方

 発熱のどの痛み、飲み込む時の痛みなどが初発症状として多くみられますが、その後数時間のうちに、呼吸困難や喘鳴(ぜんめい)(息を吸う時にぜーぜー音をたてること)が現れてきます。さらに進行すると窒息に至ることがあります。

検査と診断

 間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバースコープ検査で、喉頭蓋のはれを確認することで診断します。喉頭蓋のはれがひどいと、通常は観察できるはずの声帯が観察できず、気道狭窄(きょうさく)所見がみられます(図16)。

治療の方法

 軽症例以外は、ほとんどの場合が入院治療を行います。呼吸困難がない場合は、細菌感染に対して抗生剤、喉頭蓋のはれを軽くする目的でステロイドホルモン点滴を行いながら、呼吸困難が増強しないか厳重に観察し、治療します。

 呼吸困難が著しい場合や、短時間のうちに呼吸困難が起こると思われる時は、気管挿管(そうかん)気管切開術により緊急気道確保処置を行います。気道をしっかりと確保し、窒息の危険を免れれば、急性喉頭蓋炎自体は抗生剤の投与によって治ります。

病気に気づいたらどうする

 早急に耳鼻咽喉科診察を受けてください。呼吸困難がある場合は、できれば入院施設のあるところに救急受診してください。

塩谷 彰浩


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「急性喉頭蓋炎」の解説

きゅうせいこうとうがいえん【急性喉頭蓋炎 Acute Epiglottitis】

[どんな病気か]
 喉頭には、飲み込んだ飲食物が気管に入らないように喉頭を閉鎖する蓋(ふた)(喉頭蓋(こうとうがい))がありますが、この喉頭蓋に細菌が感染し、そこが腫(は)れる病気です。
 B型インフルエンザ菌が感染しておこることが多いものです。
 欧米では、子どもにおこりやすく、急激に呼吸困難がおこる病気として恐れられています。
 日本では、成人がかかることが多いのですが(30歳代に発症のピークがあります)、ときに、子どもにもおこります。
[症状]
 発熱などのかぜの症状とともに、咽頭痛(いんとうつう)(のどの痛み)、嚥下痛(えんげつう)(飲み込む際の痛み)がおこり、唾液(だえき)(つば)も飲み込めなくなって、よだれをたらします。声も、こもった声になります。
 発症してから2時間くらいで、急速に呼吸困難におちいります。
[検査と診断]
 頸部(けいぶ)側面のX線検査を行なうと、喉頭蓋が丸く腫れた陰影として映ります。
 喉頭ファイバースコープ検査でも、喉頭蓋が腫れているのが見られます。
[治療]
 診断がついたならば、入院のうえ、治療します。
 補液と、インフルエンザ菌を含めた細菌に有効な抗生物質が点滴で用いられます。また、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬(ステロイド薬)も使用されます。
 そのほか、抗生物質、副腎皮質ホルモン薬、血管収縮薬を含んだ液剤をネブライザーで噴霧し、喉頭蓋の腫れをとります。
 重い呼吸困難がある場合には、気管内挿管(きかんないそうかん)や気管切開などの処置がとられます。
 日常生活の注意としては、唾液が飲み込めないほどの咽頭痛が突然おこったときには、急いで耳鼻咽喉科(じびいんこうか)の診察を受けることが必要です。
 生命に危険がありますので、休日や夜間であれば、救急車の出動を要請しましょう

きゅうせいこうとうがいえん【急性喉頭蓋炎】

 喉頭の組織の一部に喉頭蓋(こうとうがい)があります。喉頭蓋は、喉頭を塞(ふさ)ぎ、食べ物が気道(きどう)に入らないようにする役割をはたしています。急性喉頭蓋炎は、この部分に生じる、細菌感染による喉頭蓋粘膜下組織(こうとうがいねんまくかそしき)の蜂巣織炎(ほうそうしきえん)の1つで、B型インフルエンザ菌の感染が原因といわれています。
 欧米では、乳幼児に多い病気とされているのですが、日本では成人にみられます。
●症状
 のどの痛みと発熱がおもな症状で、つづいて呼吸困難が現われます。喉頭蓋が丸くふくれ、声帯(せいたい)や気管が観察できません。
 呼吸困難が急速に進み、数時間で窒息(ちっそく)の危険があります。朝、元気だった青年が、夕方、変わり果てた姿になることも、年間数例みられます。
●治療
 必ず入院のうえ、強力な抗生物質の点滴が行なわれますが、気管切開や気管挿管の用意をしながら、あるいはあらかじめ気道確保のうえ、治療が行なわれます。いずれにしても油断をすると生命にかかわります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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