家庭医学館 の解説
きゅうせいせいもんかこうとうえんかせいくるーぷ【急性声門下喉頭炎(仮性クループ) Acute Subglottic Laryngitis】
喉頭内の声門下と呼ばれる気管に近い部位の粘膜(ねんまく)が急性炎症をおこし、むくんで腫(は)れる病気です。おとなにはほとんどなく、1~5歳の幼児に好発します。
[症状]
夜間、就寝中に発症しやすく、息を吸うときの喘鳴(ぜんめい)(ゼーゼー、ヒューヒューいう)と呼吸困難がおもな症状ですが、とくにイヌが遠ぼえするようなせきが特徴です。
呼吸困難が強いときはチアノーゼをおこすことがあり、まれですが、けいれんや窒息(ちっそく)の可能性もあります。
[原因]
ウイルスや細菌の感染が原因ですが、急性上気道炎(きゅうせいじょうきどうえん)(かぜ(「かぜ症候群(普通感冒)」))から併発することもあります。
幼児に好発する原因は、声門下が、もともと狭い部位であるとともに、幼児ではまばらな結合織で形成されていて、リンパ流が豊富であること、また、幼児ではこの部分の免疫能(めんえきのう)が未発達であることなどが考えられています。
なお、ジフテリアでも偽膜(ぎまく)が付着するために同様の症状がおこり、真性(しんせい)クループと呼ばれます。ジフテリア以外の原因で発症したものは、仮性(かせい)クループとも呼ばれます。
[検査と診断]
胸部X線検査で声門下腔(せいもんかくう)の狭窄(きょうさく)がみられ、喉頭内視鏡検査で声門下腔粘膜の腫れがみられることで診断がつきます。
[治療]
強力な抗生物質の使用と十分な輸液が行なわれるとともに、0.1%程度のエピネフリンや副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬のネブライザー療法(コラム「ネブライザー療法(霧滴吸入療法)」)が行なわれます。
軽症の場合はこれらの治療で改善します。重症で呼吸困難が進行するような場合は、気道の確保が必要になり、チューブを気管に挿入する気管内挿管(きかんないそうかん)が試みられます。しかし、声門下狭窄が高度でチューブが通過できないこともあり、そのような場合は気管切開術が必要になります。このような治療には入院が必要です。
きゅうせいせいもんかこうとうえんかせいくるーぷ【急性声門下喉頭炎(仮性クループ) Acute Subglottic Laryngitis】
1~3歳の子どもがかかりやすい病気で、冬季の乾燥した時期に好発します。
発熱とともに嗄声(させい)(声がれ)、犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)(ケンケンというイヌがほえるようなせき)、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難がおこるのが特徴です。
重症になるとチアノーゼをおこし、窒息(ちっそく)による生命の危険もあります。
[原因]
ウイルスの感染によって声帯(せいたい)の下が浮腫状(ふしゅじょう)に腫脹(しゅちょう)し(むくんだように腫(は)れ)、喉頭が狭くなるために呼吸困難になります。
子どもの喉頭はもともと細いのですが、声帯の下部はとくに細いためにおこると考えられています。
[検査と診断]
頸部(けいぶ)X線写真で、声帯の下部がどの程度狭くなっているかを診断します。
頸部に聴診器をあてると、「ヒューヒュー」という喘鳴が聞かれます。
ファイバースコープを鼻から入れ、喉頭を観察すると、声帯の下部が白く腫れているのを見ることができます。これが診断のいちばんのポイントになります。
[治療]
生命にかかわるので、入院治療が原則です。
粘膜(ねんまく)収縮剤(ボスミン)と副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬(ステロイド薬)の吸入を行ない、腫れをとります。
また、ネブライザーで生理的食塩水を噴霧し、喉頭に湿りけを与えます。点滴で水分を補給するとともに抗生物質、副腎皮質ホルモン薬を投与します。
呼吸困難がある場合は、酸素投与が行なわれます。呼吸困難が高度であれば、気管内挿管(きかんないそうかん)、気管切開の処置がとられます。
発熱、声がれ、イヌがほえるようなせきが突然始まったときは、緊急に受診する必要があります。休日や夜間であれば、救急車の出動を要請しましょう。
冬季、家の中で暖房を使用すると乾燥しすぎます。乾燥すると発症しやすいので、加湿器を使用しましょう。