急性声門下喉頭炎(仮性クループ)
きゅうせいせいもんかこうとうえん(かせいクループ)
Acute subglottic laryngitis (Pseudocroup)
(のどの病気)
声帯の下の気道の部分を声門下といいますが、急性声門下喉頭炎では、声門下の粘膜に炎症が起こり、粘膜がはれたり、気道の分泌物が増えたりすることにより気道が狭くなり、呼吸困難を生じます。仮性クループと呼ばれることもあります。とくに1~3歳の小児に多く、やや男児に多い傾向があります。また、秋から冬に多くみられます。
ウイルス(パラインフルエンザウイルス1、2、3型、アデノウイルス、インフルエンザウイルス)や細菌などの声門下粘膜への感染により起こります。
発熱、声がれ(嗄声)などのかぜのような症状に続いて、数日後に夜間の息苦しさと喘鳴(息を吸う時にぜーぜー音をたてること)、犬の吠えるような音の咳を生じます。重症例では強度の呼吸困難のためチアノーゼ(皮膚や粘膜が紫色になる)を示すこともあり、まれですが窒息に至ることもあります。
前述の特徴的な症状が診断の大きな手がかりになります。喉頭ファイバースコープ検査で、声門下粘膜の発赤とはれにより、声門下気道が狭くなっている所見が認められれば診断が確定します。
区別すべき疾患に急性喉頭蓋炎(こうとうがいえん)、気道異物がありますが、問診や喉頭ファイバースコープ検査、X線検査などで区別できます。
痰の粘稠度(粘りけ)を下げて吐き出すのを助けるために、輸液や加湿を行うほか、アドレナリン(血管収縮薬)の希釈(薄めた)液のネブライザー吸入やステロイドホルモンの注射、内服薬による粘膜のはれを軽くする治療が行われます。それでも、気道狭窄の症状が軽くならないような重症例では、気管内挿管や気管切開を必要とすることがあります。
重症例では呼吸困難を示し、気道確保が必要になる場合もあるので、耳鼻咽喉科と小児科の両方の診断、治療が必要です。
塩谷 彰浩
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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「急性声門下喉頭炎」の解説
きゅうせいせいもんかこうとうえんかせいくるーぷ【急性声門下喉頭炎(仮性クループ) Acute Subglottic Laryngitis】
[どんな病気か]
喉頭内の声門下と呼ばれる気管に近い部位の粘膜(ねんまく)が急性炎症をおこし、むくんで腫(は)れる病気です。おとなにはほとんどなく、1~5歳の幼児に好発します。
[症状]
夜間、就寝中に発症しやすく、息を吸うときの喘鳴(ぜんめい)(ゼーゼー、ヒューヒューいう)と呼吸困難がおもな症状ですが、とくにイヌが遠ぼえするようなせきが特徴です。
呼吸困難が強いときはチアノーゼをおこすことがあり、まれですが、けいれんや窒息(ちっそく)の可能性もあります。
[原因]
ウイルスや細菌の感染が原因ですが、急性上気道炎(きゅうせいじょうきどうえん)(かぜ(「かぜ症候群(普通感冒)」))から併発することもあります。
幼児に好発する原因は、声門下が、もともと狭い部位であるとともに、幼児ではまばらな結合織で形成されていて、リンパ流が豊富であること、また、幼児ではこの部分の免疫能(めんえきのう)が未発達であることなどが考えられています。
なお、ジフテリアでも偽膜(ぎまく)が付着するために同様の症状がおこり、真性(しんせい)クループと呼ばれます。ジフテリア以外の原因で発症したものは、仮性(かせい)クループとも呼ばれます。
[検査と診断]
胸部X線検査で声門下腔(せいもんかくう)の狭窄(きょうさく)がみられ、喉頭内視鏡検査で声門下腔粘膜の腫れがみられることで診断がつきます。
[治療]
強力な抗生物質の使用と十分な輸液が行なわれるとともに、0.1%程度のエピネフリンや副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬のネブライザー療法(コラム「ネブライザー療法(霧滴吸入療法)」)が行なわれます。
軽症の場合はこれらの治療で改善します。重症で呼吸困難が進行するような場合は、気道の確保が必要になり、チューブを気管に挿入する気管内挿管(きかんないそうかん)が試みられます。しかし、声門下狭窄が高度でチューブが通過できないこともあり、そのような場合は気管切開術が必要になります。このような治療には入院が必要です。
きゅうせいせいもんかこうとうえんかせいくるーぷ【急性声門下喉頭炎(仮性クループ) Acute Subglottic Laryngitis】
[どんな病気か]
1~3歳の子どもがかかりやすい病気で、冬季の乾燥した時期に好発します。
発熱とともに嗄声(させい)(声がれ)、犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)(ケンケンというイヌがほえるようなせき)、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難がおこるのが特徴です。
重症になるとチアノーゼをおこし、窒息(ちっそく)による生命の危険もあります。
[原因]
ウイルスの感染によって声帯(せいたい)の下が浮腫状(ふしゅじょう)に腫脹(しゅちょう)し(むくんだように腫(は)れ)、喉頭が狭くなるために呼吸困難になります。
子どもの喉頭はもともと細いのですが、声帯の下部はとくに細いためにおこると考えられています。
[検査と診断]
頸部(けいぶ)X線写真で、声帯の下部がどの程度狭くなっているかを診断します。
頸部に聴診器をあてると、「ヒューヒュー」という喘鳴が聞かれます。
ファイバースコープを鼻から入れ、喉頭を観察すると、声帯の下部が白く腫れているのを見ることができます。これが診断のいちばんのポイントになります。
[治療]
生命にかかわるので、入院治療が原則です。
粘膜(ねんまく)収縮剤(ボスミン)と副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬(ステロイド薬)の吸入を行ない、腫れをとります。
また、ネブライザーで生理的食塩水を噴霧し、喉頭に湿りけを与えます。点滴で水分を補給するとともに抗生物質、副腎皮質ホルモン薬を投与します。
呼吸困難がある場合は、酸素投与が行なわれます。呼吸困難が高度であれば、気管内挿管(きかんないそうかん)、気管切開の処置がとられます。
発熱、声がれ、イヌがほえるようなせきが突然始まったときは、緊急に受診する必要があります。休日や夜間であれば、救急車の出動を要請しましょう。
冬季、家の中で暖房を使用すると乾燥しすぎます。乾燥すると発症しやすいので、加湿器を使用しましょう。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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