急性糸球体腎炎(急性腎炎)(読み)きゅうせいしきゅうたいじんえんきゅうせいじんえん(英語表記)Acute Glomerulonephritis

家庭医学館 の解説

きゅうせいしきゅうたいじんえんきゅうせいじんえん【急性糸球体腎炎(急性腎炎) Acute Glomerulonephritis】

[どんな病気か]
 多くは、細菌、ウイルスの感染による上気道炎(じょうきどうえん)や上咽頭炎(じょういんとうえん)、扁桃炎(へんとうえん)がおこった1~3週間後に急に腎臓(じんぞう)に炎症がおこる病気です。
 A群β溶連菌(ベータようれんきん)(溶血性(ようけつせい)レンサ球菌(きゅうきん))という細菌による扁桃炎や上咽頭炎にひきつづいておこることがもっとも多く、このような場合は、溶連菌感染後急性糸球体腎炎(ようれんきんかんせんごきゅうせいしきゅうたいじんえん)と呼びます。
 ふつう、3歳から10歳までの子どもで、晩秋から寒冷期に多発しますが、近年は抗生物質の使用によって、発症頻度は減少してきています。
 腎炎をおこす原因としては、細菌の菌体成分(きんたいせいぶん)や、菌体壁などの抗原こうげん)に対して生じた抗体こうたい)が血液中で免疫複合体(めんえきふくごうたい)を形成し、これが腎臓の糸球体に沈着するため、と考えられています。
 経過や血液所見が特徴的なので、典型的な場合には、診断はむずかしくありません。
[症状]
 かなり急激に発症します。おもな症状は血尿(けつにょう)、浮腫(ふしゅ)(むくみ)、高血圧です。2~3日の経過で尿量が減り、尿はコーラ色か濃い茶色のような肉眼的血尿(目で見て尿の色がはっきりわかる)になり、その後、浮腫がまぶたや下肢(かし)(脚(あし))に現われます。浮腫が強くなると胸水(きょうすい)や腹水(ふくすい)がたまってくることもあります。
 体重をはかると、急に太っていることがわかります。ときに頭痛を訴えたり、吐(は)いたりする人もいますが、これは高血圧によっておこる症状です。
 重症の場合には、血圧が上がりすぎて、急性心不全(心不全とはの「心不全とはどんな病気か」の心不全の種類①急性心不全を参照)や高血圧性脳症(「高血圧性脳症」)をおこすことがあります。急性心不全の症状としては、脈拍促進、多呼吸、呼吸困難などで、高血圧性脳症の症状としては、けいれんや意識障害などがあります。
[検査と診断]
 検尿では、血尿のほかにたんぱく尿をみることがあります。血液を検査すると、補体という成分が減っています。病状が改善してくると補体の数値は上昇し、約3週間後には、半数以上の人が基準値にもどります。また、溶連菌が原因の場合、最近、溶連菌にかかったことを示す抗体価(ASO、ASKなどの抗体)が上昇しています。これらの検査所見は、この病気に特徴的なので、病気の症状と検査から簡単に診断がつきます。腎機能は、病気の初期には低下しており、血液中のクレアチニンや尿素窒素値(にょうそちっそち)も高くなっていることがあります。
[治療]
 保存的治療が治療の中心となります。安静、保温のほか、水、塩分、たんぱく質の食事制限が行なわれます。また、急性期には溶連菌感染に対する抗生物質の使用と、高血圧に対しては、降圧薬と利尿薬が使われることもあります。
 いずれにしても、これらの治療は、発病初期の数日から数週間にかぎられるもので、検尿の異常以外の症状がなくなったら、ふつうの生活にもどし、通常、薬を服用する必要もありません。
 この病気の特徴は、急に発症して急に悪くなるけれど、よくなるのも早いことです。肉眼的血尿は、ふつう1週間以内に消えてしまいますが、顕微鏡的レベルの血尿は、数か月から、ときに1年かかってゆっくりと消失します。
 経過中、かぜなどをひいて一時的に血尿が悪化することもありますが、とくに心配することはありません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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