怪しからず(読み)ケシカラズ

デジタル大辞泉 「怪しからず」の意味・読み・例文・類語

けしから◦ず【怪しからず】

[連語]形容詞「け(怪)し」の未然形+打消しの助動詞「ず」》
特に何ということもない。たいしたことがない。
「世の中のかくはかなければ、―◦ぬわらはべの行く先思ひやられて」〈宇津保春日詣
はなはだ不都合である。あるまじきことだ。
「何か―◦ず侍らむ。道理なき事にも侍らばこそあらめ」〈落窪・三〉
常識を外れている。普通ではない。
「―◦ぬ泰親が今の泣きやうや」〈平家・三〉
異様である。あやしげだ。
木霊こたまなど云ふ、―◦ぬかたちもあらはるるものなり」〈徒然・二三五〉
並大抵でない。はなはだしい。
「―◦ぬお寒さでございます」〈滑・浮世風呂・二〉
[補説]形容詞「けし」ですでに、普通でない、よくないの意味があり、それを「ず」で否定した形が、かえってもとの意味を強めることになったもの。

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精選版 日本国語大辞典 「怪しからず」の意味・読み・例文・類語

けしからず【怪しからず】

〘名〙 (形動)
① 不都合なこと。あるまじきさまであること。
親長卿記‐文明九年(1477)閏正月二〇日「乍居勘日次之事、けしからすの申状也。重可仰云々」
② 異常であること。思いもよらないさま。
※梵舜本沙石集(1283)五末「いかにいかに、何とか申さむずらむ。いひはてさせて、わらひ給へかし。けしからずの咲様(わらひやう)や」

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