漢字表記地名「釧路」のもとになったアイヌ語に由来する地名。コタン名・場所名のほか河川・山岳・湖・湊などの名称としても記録されている。元禄郷帳に「くすり」、天保郷帳には「クスリ持場」のうち「クスリ」とみえ、当地一帯は近代に入り釧路村に包含された。仮名表記は古くは平仮名で「くすり」(「津軽一統志」「蝦夷蜂起」「狄蜂起集書」・享保十二年所附・「蝦夷談筆記」「寛政蝦夷乱取調日記」)と書かれていたが、のち片仮名の「クスリ」が多くなる。ただし「クシリ」と記すものもある(玉虫「入北記」)。漢字表記は「久須利」(谷「蝦夷紀行」)、「久寿里」(東蝦夷地場所大概書)、「楠量」(児山「蝦夷日記」)、「薬」(島「入北記」)、「久摺」(板本「東蝦夷日誌」)がみられる。語義について谷「蝦夷紀行」は「久須利といふはクスルなるよし。クスは直き事なり、ルは道の事也。ビロウより海上にて直路といふ事なるよし」(寛政一一年六月二四日条)と述べ、「東行漫筆」には「クスリ 越る事をクシュ、ルウーとは道の事、川をベツ。こゆる道の川と云事也」(文化六年四月二九日条)とみえる。秦「地名考」は「クスリ クスは越なり。リは高也。会所のうしろ山を越て浜に至る道あり。故に此名を発するか。一にクウシルーと云。クは自、ウシは生、ルは路也。自造路と訳す。又、クシュリとも訛語す」、「地名考并里程記」は「クスリ 夷語クシユルなり。クシルーの略語にて、越る道と訳す。扨、クシとは越へ、ルーとは道と申事にて、此所より奥地ニシベツ上ミ川并シベツ海岸、猶又西地シヤリ等へ踰越する故、地名になすといふ」とする。このほか「蝦夷日誌」(一編)には「原名はクシル。クシは越る、ルは路なり。当所より諸方へ路ありと云儀哉」、「戊午日誌」(久須利誌)には「本名はクシルなるよし。クシは有ると云儀、ルは道と云儀。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
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