慎思録(読み)しんしろく

改訂新版 世界大百科事典 「慎思録」の意味・わかりやすい解説

慎思録 (しんしろく)

江戸時代の儒者貝原益軒学問上の随想論評を最晩年に編集した書。6巻。1714年(正徳4)の自序がある。書名は《中庸》の〈審問慎思〉また朱子の〈慎思明弁〉に由来する。朱子・陽明兼学から出発し36歳で朱子学一途に進む決意をした益軒は,なお朱子学の観念性,本体と現象とを峻別する態度にあきたらなかった。本書は朱子哲学の基本問題に関する自己の見解を述べたものだが,後に《大疑録》で表明される古学派的傾向(理気合一論,気一元論)もほの見えている。《益軒全集》2巻,《日本倫理彙編》8巻所収
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百科事典マイペディア 「慎思録」の意味・わかりやすい解説

慎思録【しんしろく】

貝原益軒の著。6巻。漢文で書かれている。1714年刊行。《大疑録(たいぎろく)》とともに最晩年の著。知行両立を説き,存養省察を主張するなど,経義・哲学・道徳教育に関する見識朱子学立場から述べている。しかし,のちに《大疑録》で表明される古学派的立場もほのみえている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「慎思録」の解説

慎思録
しんしろく

貝原益軒(えきけん)の学問論。6巻。1714年(正徳4)成立。哲学・経義・道徳・倫理・教育などについての概説書。学問における慎思の重要性を説くなかで朱子学に対する見解をのべる。「大疑録」に至る過渡的な著作。付載の自己編には自身の事業や学問についての晩年の感懐をのべる。「益軒全集」「日本倫理彙編」所収。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「慎思録」の意味・わかりやすい解説

慎思録
しんしろく

江戸時代初期の儒者貝原益軒の著。6巻。正徳4 (1714) 年成立。『自娯集』『大疑録』とともに3部作をなす。彼の道徳論はこれにより知れる。朱子学への疑念提示は,いまだ全面的な形はとっていない。それは『大疑録』においてうかがわれる。

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