慢性非細菌性前立腺炎(読み)まんせいひさいきんせいぜんりつせんえん(英語表記)Chronic nonbacterial prostatitis

六訂版 家庭医学大全科 「慢性非細菌性前立腺炎」の解説

慢性非細菌性前立腺炎
まんせいひさいきんせいぜんりつせんえん
Chronic nonbacterial prostatitis
(男性生殖器の病気)

どんな病気か

 症状は慢性細菌前立腺炎と同じです。前立腺炎のなかで最も高頻度にみられます。

検査と診断

a.炎症性

 慢性細菌性前立腺炎の項で示した検尿の方法で、③と④に白血球は認められるものの原因になる細菌が認められないものをいいます。クラミジアマイコプラズマなど一般細菌以外の病原体が原因になっている可能性があります。

 通常、医療機関では、泌尿器科専門医でもすべての病原体の検査をするわけではありません。また細菌が検査でたまたま検出できなかった可能性も考えられます。

b.非炎症性

 同じく、前述した検尿の方法では、白血球も細菌もすべての検体中にまったく検出できないものをいいます。つまり、臨床検査では前立腺に炎症が認められないにもかかわらず、前立腺に由来すると考えられる独特の症状(会陰部痛(えいんぶつう)、残尿感、排尿時痛、尿道や陰茎(いんけい)疼痛など)を訴える疾患です。

 前立腺周囲の骨盤底筋(こつばんていきん)の過緊張や、骨盤内のうっ血、免疫異常、さらには心身症的要素(精神科的疾患)の関与も指摘されています。

 ①~④の検体を検査する方法は時間がかかり、しかも検体③が採取できないことが多く実用的でないとの理由から、②と④で代用する医療機関もあります。

 まれに、膀胱がん前立腺がんなど生命をおびやかす重大な疾患で同様の症状を訴える患者さんがいるので、泌尿器科専門医によるそれらの除外診断が大切です。

治療の方法

 抗菌薬が第一選択とされることが多いのですが、決定的な治療法は確立されていません。

 炎症性のものでは細菌とクラミジアの両方に有効な抗菌薬が投与されます。非炎症性のものでは筋肉の緊張をゆるめる薬や、温座浴などの温熱治療、漢方薬が用いられます。さらに精神科医との連携も必要な場合があります。

 いずれにしても症状の軽減までには長い時間が必要です。このため患者さんによっては、不安感が強くなり次々に医療機関をかえて受診を繰り返すことになります。治癒までには時間がかかりますが、生命に関わるような重大な疾患に進む危険性のないことを患者さんに説明して、まず安心してもらうことが治療の第一歩です。

 病状を深刻にとらえず、症状と付き合っていくように生活指導だけ行い、投薬せずに経過観察することもあります。日常生活上の注意点としては、長時間座位を避けて体を動かすこと、過度の飲酒を避けることなどがあげられます。性生活は避ける必要はありません。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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