ヘレニズム時代の哲学の一学派。懐疑の原語である「スケプシス」skepsisというギリシア語は元来探究という意味であった。しかし探究はしばしば袋小路に陥り、問題解決に絶望することも多い。真理の探究は、真理へのエネルギーの弱まるとき真理への絶望に転化する。そこに、真理は存在しない。たとえ存在しても人間のことばでは認識できないとする懐疑論が生まれる。古代ギリシア哲学はソクラテス、プラトン、アリストテレスで最盛期を迎えたのち、急速にエネルギーを喪失した。ポリス(都市国家)からヘレニズム世界への拡大とその崩壊の時代であった。文化的・社会的混乱の時代にあって、人々は個人的平安を与える処世術を求めるに急であった。古代懐疑派はこうした背景から生まれた。その開祖ピュロンはものの本性の認識は不可能であり、そこで判断中止(エポケー)を勧め、そこから思い煩(わずら)いのない平常心が得られるとした。それは実践的・倫理的性格が強かったが、懐疑派の基本型である。アルケシラオスとカルネアデスの新アカデメイアによって理論化が進行して、ストア派の真理基準たる把握表象が独断論と批判されたが、「理にかなったこと」「もっともだと信じられること」を行動基準とした意味で柔らかい懐疑論である。アンティオコスの折衷主義によって、新アカデメイアは懐疑主義を捨てた。その後アイネシデモスとアグリッパによって、ピュロニズムがより厳格な懐疑主義として再興され、懐疑派のモデルになった判断中止の論拠の定型が考案された。そしてセクストス・エンペイリコスでは経験主義的色彩をいっそう濃くすることとなった。
古代哲学は、こうして人間のことばの弱さゆえに真理への絶望である懐疑論の闇(やみ)に陥り、また一転して真理自体である神に絶望的に脱我超越するプロティノスをもって自己解体し終えた。しかしことばへの不信は人間不信に直結する。真理のことばが自ら人間となって人間の地平に現れ来り、哲学がその目標とエネルギーを新たにして甦(よみがえ)る姿がキリストの問題と古代以後の歩みであった。
[山本 巍]
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