日本大百科全書(ニッポニカ) 「エポケー」の意味・わかりやすい解説
エポケー
えぽけー
epokhē ギリシア語
ギリシア語のもとの意味は「とどまること」「何かをしないでおくこと」。ピュロンその他の古代懐疑主義者たちが「判断停止」の意味に用いた。彼らによれば、判断する人についても立場や状態や条件が多様であるから、何物も、一義的に善(よ)いとも悪いとも、また、あるともないとも判断できない。ゆえに、われわれは何事についても判断を差し控えるほかはなく、またそうすべきであるという。近代の哲学者フッサールは、このエポケーを、彼の現象学の方法を表現することばとして用いた。この場合は、純粋意識を記述する道を開くために、事物の存在について判断を控えることを意味する。
[田中享英]
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