改訂新版 世界大百科事典 「懸濁重合」の意味・わかりやすい解説
懸濁重合 (けんだくじゅうごう)
suspension polymerization
高分子化合物を合成する実際的方法の一つ。不飽和化合物であるモノマー(単量体)が互いに多数付加して高分子となる付加重合反応を,モノマーを大量の水中に分散,懸濁させて行う方法をいう。重合開始剤はモノマーに溶けるものを選んで少量加える。重合反応は懸濁したモノマーの小液滴中で起こり,これがそのまま高分子となる。大量の水の中の反応であるので重合反応に伴って発生する熱の除去が容易で反応温度の制御がしやすい。また生成物のポリマー(重合体)は小粒状で得られるので,ろ過による分離,水による洗浄,乾燥が容易である。このため工業的に最もよく行われる方法の一つで,ポリスチレンやポリ塩化ビニルの製造もこれによっている。
執筆者:井上 祥平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報