ゼラチン(読み)ぜらちん(その他表記)gelatin

デジタル大辞泉 「ゼラチン」の意味・読み・例文・類語

ゼラチン(gelatin)

動物の骨・皮などに含まれるコラーゲンを煮て水溶性たんぱく質としたもの。温湯に溶け、冷却すればゼリー状に固まる。食用のほか局所止血剤や細菌類培養基、写真感光膜などに用い、にかわとして接着剤にする。膠質こうしつ
舞台照明に色を与えるため、ライトにかぶせるカラーフィルター。
[類語]栄養滋養養分人工栄養栄養分栄養素栄養価炭水化物含水炭素糖質糖類澱粉蛋白質アミノ酸コラーゲン脂肪・脂肪分・脂質ビタミンミネラル灰分無機質食物繊維

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精選版 日本国語大辞典 「ゼラチン」の意味・読み・例文・類語

ゼラチン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] gelatin ) 誘導蛋白質の一つ。グリシンプロリンオキシプロリンなどのアミノ酸を多量に含む複雑な高分子物質。工業的には動物の骨、軟骨、皮膚、腱(けん)などを水で長時間煮沸し、抽出してつくる。普通、淡色・透明で無味・無臭のゼリー状のものをゼラチンといい、濃色で不純物を含むものは膠(にかわ)という。菓子などの食品、止血剤、細菌類の培養基、写真乳剤、薬用カプセル、接着剤などに用いる。
    1. [初出の実例]「肉素類〈略〉蛋白質、筋肉繊維質、干酪質及び膠質(ゼラチン)あり」(出典:教育学(1882)〈伊沢修二〉四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゼラチン」の意味・わかりやすい解説

ゼラチン
ぜらちん
gelatin

調理や製菓でゼリー形成に用いるゲル化剤の一種。動物の骨や皮、腱(けん)などに含まれる硬タンパク質のコラーゲンを水とともに加熱して分解し、水溶性にした誘導タンパク質。良質の材料を用い精製度が高く、淡色透明のものが食用ゼラチンで、精製ゼラチンともいう。多少の不純物を含み、濃色不透明のものは膠(にかわ)という。原料にはおもにウシの骨、ブタの皮などが用いられる。原料を石灰水に浸して脂肪を除去したあと、蒸気釜(がま)で加熱してコラーゲンをゼラチン化し、不純物を除いて乾燥する。乾燥法により、薄板状と粉末状がある。

 ゼラチンの主成分はタンパク質で、栄養源となるが、必須(ひっす)アミノ酸のうちトリプトファンを欠くため、これだけでは良質のタンパク質とはいえない。しかし、リジンが多いので、リジンの少ない小麦製品と組み合わせてとると、タンパク質としての利用価値が高くなる。

河野友美・山口米子]

料理と用途

ゼラチンは冷水には膨潤するだけだが、温水には溶け、さらに冷却するとゼリー化する。この性質を利用して、料理や製菓では主としてゼラチンゼリーに用いられる。ゼリー状に固めるときの濃度は、固めようとするものにより差はあるが、通常2~3%である。まずゼラチンを水につけ、十分吸水させてから水を加えて加熱する。ゼラチンは60℃前後でよく溶ける。沸騰させると性質が変わり、ゼリー化しにくくなる。またゼラチン液は水素イオン濃度指数(pH)が4前後になると等電点となり、きれいにゼリー化しない。果汁や果物を加えてわずかに酸味のついたときは注意が必要である。また、タンパク質分解酵素を含む生(なま)のパイナップルパパイヤキウイフルーツイチジクなどの果肉を混ぜると、タンパク質であるゼラチンは分解されてゼリー化しない。ゼラチンの凝固温度は低い。濃度にもよるが、ほぼ10℃以下にする必要がある。ゼリー化には数時間以上を要する。ゼラチンは、各種ゼリー菓子、寄せ物、冷製料理の飾りなどのほか、アイスクリームの安定剤、ハム、ソーセージの結着剤、一般のタンパク質性食品(魚肉練り製品など)の増量剤、食用以外には写真感光膜、固形培地、止血剤、薬用カプセル剤などにも使用される。

[河野友美・山口米子]

『安孫子義弘他編『にかわとゼラチン 産業史と科学技術』改訂版(1997・日本にかわ・ゼラチン工業組合)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ゼラチン」の意味・わかりやすい解説

ゼラチン
gelatin

動物の骨,軟骨,皮膚,腱などにはコラーゲンという不溶性タンパク質が多量に含まれているが,これらの組織を長時間煮沸するとコラーゲンは変性して水溶性になり抽出されてくる。この誘導タンパク質をゼラチンと呼ぶ。可溶化の原因はペプチド鎖間の塩結合や水素結合が切断されてコラーゲン分子の立体構造が変化するためである。分子量は平均数万。グリシン,プロリン,ヒドロキシプロリンなどのアミノ酸を多く含むが,コラーゲンと同様にシスチン,システインを含まないことを特徴とする。冷水中では膨潤するだけであるが温水には溶け,再び室温にもどすと2~3%以上の濃度では弾性に富む寒天状ゲルになる。ゼリーや菓子など食品に使われる。抗原性がなくアナフィラキシーを起こさないので止血剤に用いられ,ほかに写真用乳剤,薬用カプセルなど用途は広い。濃色で多少不純物を含むものはにかわと呼ばれ,接着剤や墨汁の保護コロイドとして用いられる。
執筆者:

板状のものと粉末状のものとが市販されている。無色ないし淡黄色であるが,板状のものは淡色か透明なものがよい。200㏄の水にゼラチン10gの割合で煮溶かしてゼリー液とし,これを用いてゼリー,ババロア,ブラマンジェ,アスピックその他,冷たい菓子や料理をつくる。ゼラチンは弱火で煮ることがたいせつで,いきなり熱湯に入れると溶けにくくなる。成分は大部分がタンパク質であるが,必須アミノ酸のトリプトファンを含まないため,栄養的な価値は低い。
執筆者:

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化学辞典 第2版 「ゼラチン」の解説

ゼラチン
ゼラチン
gelatin

コラーゲンを長時間熱水処理した際に得られる水溶性タンパク質の総称.不均質物質で分子量は1.5~25×104,または2~7×104 と推定されている.幼若動物のコラーゲンから調製した場合は,コラーゲン型らせんを形成している3本のポリペプチド鎖が別々にほどけたものが得られるが,多くの場合は2本または3本のペプチドが結合したものが一部に生じる.ペプチド鎖は,もはやコラーゲン型らせん構造のような規則性のある構造をとってはいない.写真用,接着用,食品用など応用範囲は広い.[CAS 9000-70-8]

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百科事典マイペディア 「ゼラチン」の意味・わかりやすい解説

ゼラチン

コラーゲンの熱湯処理で得られる変性体。工業的には動物の骨,皮,腱(けん)などを長時間石灰水に浸し,酸で中和した後65〜70℃の湯で抽出する。コラーゲンのペプチド連鎖間のらせんがほどけて,水溶性を示す。温水に溶け,冷えると弾性のあるゲルになる。食品,写真感光膜,薬用カプセル,細菌培地などのほか,不純なものは膠(にかわ)として利用される。
→関連項目にかわ(膠)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゼラチン」の意味・わかりやすい解説

ゼラチン
gelatin

グルチンともいう。動物の皮,腱などから抽出,精製した分子量1万 5000~2万 5000の不均一高分子化合物。淡色または透明,無味でゼリーをつくるものをゼラチンといい,着色し,多少の不純物を含むものを膠という。一種の蛋白質であるが,シスチン,システインを含まないので,栄養学上は不完全蛋白質である。菓子製造,細菌培地,写真乳剤,接着剤などに用いられる。

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栄養・生化学辞典 「ゼラチン」の解説

ゼラチン

 コラーゲンを加熱して得るタンパク質.グリシン,プロリン,ヒドロキシプロリンに富むが,リシン,トリプトファンなどを欠き,栄養価は劣る.

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世界大百科事典(旧版)内のゼラチンの言及

【膠】より

…動物の皮,骨,腱,内臓膜を主要原料とし,これらを水とともに熱して,得られた抽出液を濃縮して乾燥したもの。原料の主成分タンパク質であるコラーゲン(骨の場合はオセインosseinと呼ばれる)が,加熱によって変性したものをゼラチンと呼ぶ。加熱抽出前に原料中のコラーゲン以外の成分をアルカリ処理や酸処理によって取り除く精製作業が行われる。…

※「ゼラチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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