日本大百科全書(ニッポニカ) 「戸馳島」の意味・わかりやすい解説
戸馳島
とばせじま
熊本県中部、宇土半島(うとはんとう)の南西端、八代海(やつしろかい)に浮かぶ島。戸馳大橋で半島と結ばれる。1955年(昭和30)までは一島一村の島。三角(みすみ)町を経て2005年(平成17)からは宇城市(うきし)に属している。面積6.94平方キロメートル。最高点は77メートルと地形的には著しく開析の進んだ低山地を呈するが、地質的には新生代の大岳溶岩類で覆われた北半域と、中生代の白亜系堆積(たいせき)岩からなる南半域とに分かれる。島嶼(とうしょ)特有の海洋性気候は、特異な農水産業を発展させている。とくにこの傾向は、1973年(昭和48)に戸馳大橋が完成してからいっそう明確化し、北東部のミカン・甘夏の栽培、南東部の花卉(かき)(ヤグルマソウ、ユリ、グラジオラス、フリージア、洋ラン)・施設園芸作物(イチゴ、メロン)の栽培、西部から南部にかけての海浜のクルマエビ・アサリの養殖などはその好例である。またキャンプ場、海水浴場で有名な東海岸の北に位置する浜ン洲貝塚(はまんすかいづか)は、女性と子供の抱合葬(だきあわせそう)の発掘地として全国的によく知られている。人口1371(2000)。
[山口守人]