手錠(読み)てじょう

精選版 日本国語大辞典 「手錠」の意味・読み・例文・類語

て‐じょう ‥ジャウ【手錠ヂャウ・手鎖】

〘名〙 (「錠」「鎖」は当て字)
罪人の手に施す刑具。鉄製瓢箪型で、両手にはめて錠をかけ、手が使えないようにするもの。てがね。てぐさり。
御仕置裁許帳‐一〇・八三七・延宝五年(1677)二月九日「不届成る故、為過失、手鎖を懸、宿并家主に預け遣候処」
※花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中「小き丸帯を占め、手錠(テヂャウ)腰縄にて」
江戸時代刑罰の一つ。①をかけるところから起こった名で、庶民の軽罪に科せられ、三〇日、五〇日、一〇〇日の別があり、前二者は五日目ごとに、後者隔日封印を改める。御咎手錠
咄本・鹿の巻筆(1686)一「かるたをすくといふ事の、他へもしもきこへなば、てじゃうをおろされ、家業をとりあげられてせんかたなし」
③ 江戸時代、未決囚を拘留する方法。①をかけた上、公事宿、町村役人などに預け、逃亡を防いだ。
地方落穂集(1763)一四「右の者儀御吟味中手鎖の上、私共へ御預け被仰付置候に付」

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デジタル大辞泉 「手錠」の意味・読み・例文・類語

て‐じょう〔‐ヂヤウ|‐ジヤウ〕【手錠/手鎖】

罪人などの手首にはめて錠をおろし、手の自由を奪い、自損行為や逃走を防止するための鉄製の腕輪。てぐさり。「―を掛ける」
(手鎖)江戸時代、庶民に科した刑罰の一。罪の軽重によって30日・50日・100日の別があり、この期間手鎖をはめられていた。てぐさり。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「手錠」の意味・わかりやすい解説

手錠
てじょう

拘束された者の手首にはめて、逃走ないし自殺等を防止するための用具。古くは、令制(りょうせい)時代の刑罰用具である手械(てかせ)に始まり、江戸時代には手鎖(てじょう/てぐさり)と称して、刑罰および未決拘禁に使用された。1908年(明治41)監獄法の制定で、科刑の手鎖から、戒具(かいぐ)に改められ、現在使用されているような型式の手錠になった。警察官が被疑者を逮捕した際ならびに警察官や刑務官が未決拘禁者および受刑者を護送する際に用いる。このほか、刑務所、拘置所、警察の留置施設、少年院等の拘禁施設において、被拘禁者の逃走、自傷行為などを防止する場合にも用いられる(刑事収容施設法78条ほか)。手錠は警察官および法律に定められた特別司法警察職員が常時携帯しており、制服警察官が常時保有するものはアルミ合金製の黒色で、鍵(かぎ)を使用して外すようになっている。手錠は両手錠のほか、片手錠、特殊なものとして革手錠がある。

[富沢徳之・田村正博]

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百科事典マイペディア 「手錠」の意味・わかりやすい解説

手錠【てじょう】

錠のついた鉄製の腕輪で,犯人などの手首にはめて逮捕,拘引の際や刑務所内の戒具として用いられる。江戸時代には手鎖と書き,軽い刑罰(期間は30日,50日,100日の3種)にも使用。

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