家裁の決定によって送致されたおおむね12歳から20歳を収容し、生活指導などを通じて健全育成を図る法務省所管の施設。18、19歳の特定少年も含まれ、21歳以上を収容することもある。昨年4月時点で全国に46カ所あり、犯罪傾向の軽重や心身の障害の状況に応じて1~5種に分かれている。新規収容者は減少傾向が続いており、2021年は1377人。1923年に多摩(東京都八王子市)、浪速(大阪府茨木市)の両少年院が開かれ、今年100年となる。
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家庭裁判所から少年法の定める保護処分として送致された少年(性別は不問)と、刑事施設のかわりに少年院で刑の執行を受ける少年を収容し、矯正教育、社会復帰支援その他の必要な処遇を行う施設。1948年(昭和23)に制定された旧少年院法(昭和23年法律第169号)は、矯正教育の内容・方法、在院者の権利義務関係、職員の権限等が不明確であったことから2014年(平成26)に全面改正された。現在は、この改正少年院法(平成26年法律第58号、2015年6月施行)に基づいている。少年院は、すべて国立の施設で法務大臣の管理下にある。女子を収容する少年院は女子少年院ともよばれる。明治期には私立・公立の感化院が設けられていたが、1922年(大正11)に制定された旧少年法(大正11年法律第42号)および矯正院法(大正11年法律第43号)により矯正院が発足し、これが少年院の前身となった。
少年院には第1種から第5種までの5種類があり、第1種の少年院は保護処分の執行を受ける者(第5種に定める者を除く)で心身に著しい障害のない、おおむね12歳以上23歳未満の者(第2種少年院の対象者を除く)を、第2種の少年院は保護処分の執行を受ける者(第5種に定める者を除く)で心身に著しい障害はないが、犯罪的傾向の進んだ、おおむね16歳以上23歳未満の者を、第3種の少年院は保護処分の執行を受ける者(第5種に定める者を除く)で心身に著しい障害のある、おおむね12歳以上26歳未満の者を、第4種の少年院は少年院において刑の執行を受ける者を、第5種の少年院は特定少年(18歳・19歳の少年)として2年の保護観察の保護処分(少年法64条1項2号)の執行を受け、かつ、遵守事項を遵守せず、その程度も重く、また改善・更生を図るために少年院での処遇が必要であるとして少年院に収容する旨の決定(同法66条1項)を受けた者をそれぞれ収容する。第4種を除き、少年がどの種類の少年院に入るかは、家庭裁判所の決定による。ただし、1施設で2種類以上の少年院をもつところもある。2021年(令和3)4月1日の時点で、本院41庁、分院6庁が設置されている。各少年院には少年院視察委員会が置かれ、市民から構成される委員が少年院を視察し、その運営に関して少年院長に対し意見を述べるものとされる。なお、在院者は「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」(刑法97条)にはあたらないので、施設からの逃走に、刑法第97条の単純逃走罪の適用はない。18歳未満の少年が保護処分を受けた場合、在院期間は原則として少年が20歳に達したときまでである(ただし、20歳に達するまで1年に満たない場合は1年間収容を継続できる)。これに対して、特定少年が保護処分を受けた場合、在院期間は特定少年に対する2年の保護観察における少年院収容可能期間(1年以下)または特定少年に対する少年院収容期間(3年以下)で家庭裁判所が定めた期間である。
少年院の矯正教育は、在院者の犯罪的傾向を矯正し、ならびに在院者に対し、健全な心身を培わせ、社会生活に適応するのに必要な知識および能力を習得させることが目的とされている。そこで、在院者の特性に応じ、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導、特別活動指導を適切に組み合わせて体系的・組織的に行うものとされる。生活指導としては、カウンセリングやグループ・ワークの理論の活用が図られている。職業指導は、勤労を重んずる態度を培い、個性に応じた職業選択を可能にする能力を助成するよう努めており、また教科指導はおもに義務教育課程修了を目的としている。特別活動指導は社会貢献活動、野外活動、音楽の実施などを含む。法務大臣は「矯正教育課程」として、一定の共通する特性を有する在院者の類型ごとに矯正教育の重点的な内容や標準的な期間を定めるものとされる。各少年院では指定を受けた矯正教育課程ごとに「少年院矯正教育課程」(目標、内容、実施方法、期間等)を定め、これに基づいて在院者ごとに具体的な「個人別矯正教育計画」が作成される。
[小西暁和 2022年6月22日]
『矯正協会編『矯正教育の方法と展開――現場からの実践理論』(2006・矯正協会)』▽『中森孜郎・名執雅子編著『よみがえれ少年院の少女たち――青葉女子学園の表現教育24年』(2008・かもがわ出版)』▽『毛利甚八著『少年院のかたち』(2008・現代人文社、大学図書発売)』▽『法務省矯正局少年矯正課編『少年院における矯正教育の現在』(2009・矯正協会)』▽『広田照幸・古賀正義・伊藤茂樹編『現代日本の少年院教育――質的調査を通して』(2012・名古屋大学出版会)』▽『法務省矯正局編『新しい少年院法と少年鑑別所法』(2014・矯正協会)』▽『法務省矯正局編『子ども・若者が変わるとき――育ち・立ち直りを支え導く少年院・少年鑑別所の実践』(2018・矯正協会)』
家庭裁判所の審判により少年法の定める保護処分として送致された者を収容し,これに矯正教育を授ける施設で(少年院法1条),法務省に属する。外国には私立の少年院もあるが,日本ではすべて国立の施設である(3条)。日本では明治期にまず民間の主導で感化教育が始められ,内務省がこれを推進して私立および公立の感化院が設けられた。しかし大正期には,司法省も少年法の制定に努力し,1922年旧少年法とともに矯正院法を制定して,矯正院を発足させた。これが少年院の前身である。
現在の少年院は,戦後の少年法制の全面的改定にともない制定された少年院法(1948公布)に基づく。かつての矯正院には,収容,懲戒の場という色彩が強かったのに対し,現行の少年院法は,少年院を非行少年に対する収容,保護,教育,訓練の場として位置づけている。収容者の年齢と特性に応じて,初等,中等,特別,医療の4種類があり,初等少年院は,心身に著しい故障のない,14歳以上おおむね16歳未満の者を,中等少年院は,心身に著しい故障のない,おおむね16歳以上20歳未満の者を,特別少年院は,心身に著しい故障はないが,犯罪的傾向の進んだ,おおむね16歳以上23歳未満の者を,医療少年院は,心身に著しい故障のある,14歳以上26歳未満の者を,それぞれ収容する(2条)。男女が完全に分離された施設であり,また多くは種類別されているが,初等・中等など併置されたものもある。全国で54庁(1994年1月)が設置されており,年間の新収容者は約5000人である。少年院における矯正教育は,児童福祉法の施設である教護院・養護施設(1997年の法改正により,それぞれ児童自立支援施設,児童養護施設と改称)に比べると強制的色彩が強く,非行少年を強制的に収容し,原則として外出禁止の施設内で規律ある生活を営ませ,社会生活に適応させることを目的とした教科教育,職業補導,生活指導等が行われる。収容者の処遇にあたっては,段階的処遇をとり入れるとともに(6条),収容者をその特性に応じて短期(交通短期4ヵ月以内,一般短期6ヵ月以内として運用)または長期(2年以内として運用,ただし延長は期間の制限を設けない)のいずれかに所属させ,長期処遇については,さらに少年のニーズに応じた複数の課程(生活指導課程,職業訓練課程,または重大な非行を犯した少年に対する特別処遇課程など)を設けて効果的な矯正教育を図る,分類処遇の制度がとられている。
→少年法
執筆者:酒巻 匡
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…広義には,刑務所等の矯正施設において,犯罪者に対してなされる教育を指すが,狭義には,少年院において非行少年に対して行われる教育をいう。資本主義の発展とともに犯罪が増加して,犯罪対策の必要性が高まり,とりわけ可塑性に富む青少年に対しては,成人犯罪者から分離して処遇することが為政者の課題となった。…
…非行を犯した少年は家庭裁判所へ送致され,少年本人や保護者の資質,環境,経歴等に関する専門的調査に基づいて,審判不開始,不処分,保護処分,検察官送致等が決定される。なお保護処分には少年法による保護観察と少年院送致,さらに教護院・養護施設(1997年,それぞれ児童自立支援施設,児童養護施設と改称)など児童福祉法に基づく処分が含まれる。 日本のみならず,世界的にも非行少年の処遇の中では少年院は最も組織的かつ強力な矯正教育が行われるものと期待された。…
※「少年院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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