払田柵遺跡(読み)ほったのさくいせき

改訂新版 世界大百科事典 「払田柵遺跡」の意味・わかりやすい解説

払田柵遺跡 (ほったのさくいせき)

日本古代の城柵官衙遺跡。秋田県大仙市の旧仙北町払田および仙北郡美郷町の旧千畑村本堂城回にまたがって存在する。明治末ごろから地元でその存在が知られ,1930年上田三平が発掘調査を実施し,柵木(さくぎ)が検出された。翌年調査された城輪柵(きのわのさく)遺跡とならんで,古代東北の文献上の柵の実態がはじめて具体化されたものとして注目され,近年まで東北の城柵を考えるうえで大きな影響を与えてきた。遺跡名は地名の払田に柵を付したものであり,〈出羽柵〉など文献にみえる柵と同列視はできない。本遺跡は雄物川中流の仙北平野中央部にあり,烏川と鞠子川にはさまれた低地にある。外郭は,外柵と呼ばれる角材列で,西の小高い真山,および東の弓なりの長森をめぐっている。東西約1350m,南北720mの規模で,東西南北に八脚門を設けている。内郭は東の長森がそれで,周囲を築地あるいは内柵と呼ばれた角材列がめぐっている。南と北には八脚門が置かれている。さらに内郭の中央部に政庁跡がある。周囲は約3.6m間隔に柱を立て,その間を板でふさいだいわば板塀とでも呼ぶべき施設である。中央部には正殿が,またその前方左右には南北棟の脇殿が検出されている。正面には八脚門が開き,その前方左右にも東西棟建物が配されている。従来この遺跡は一大軍事基地のように評価されてきたが,近年の発掘によって,むしろ官衙的な性格が明らかになってきた。現在は,本遺跡を山本郡郡衙あるいは雄勝城にあてる説があるが,遺跡の規模や形から郡衙とは理解しがたく,雄勝城説に利があろうかと思われる。ただこの説に対しても,この地が後の雄勝郡内でないので無理であるという批判もある。
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百科事典マイペディア 「払田柵遺跡」の意味・わかりやすい解説

払田柵遺跡【ほったのさくいせき】

秋田県仙北町(現・大仙市)にある遺跡。城柵跡(史跡)は奈良時代後期か平安初期に東北地方経営のために設けられたものであるが史料には登場しない。雄勝(おがち)城跡とする説もある。全長約3640mの外柵が楕円形にめぐり,中の長森丘陵の北側に一直線に内柵がある。外柵の東西南北4ヵ所と内柵の中央に門跡が認められる。柵は太い杉の角材を並べている。木簡も多数出土している。
→関連項目仙北[町]

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