折衝府(読み)セッショウフ

デジタル大辞泉 「折衝府」の意味・読み・例文・類語

せっしょう‐ふ【折衝府】

中国代、各地に置かれた軍府府兵制度の基礎をなすもので、全国六百余か所に設置府兵徴集訓練動員などをつかさどった。長官折衝都尉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「折衝府」の意味・読み・例文・類語

せっしょう‐ふ【折衝府】

  1. 〘 名詞 〙 中国、唐代の府兵制度の基礎となった地方設置の軍府。長官を折衝都尉といい、府兵が隷属する。〔通典職官武官下・折衝府〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「折衝府」の意味・わかりやすい解説

折衝府
せっしょうふ

中国、唐朝前半期の府兵(衛)制の基礎をなす地方常設の軍事行政機関。隋(ずい)の鷹揚府(ようようふ)を受け継ぎ、長官折衝都尉(せっしょうとい)の下に果毅(かき)都尉、別将、旅帥(百人長)、隊正(50人長)、副隊正などの武官と長史などの事務官を置き、徴兵、訓練、動員、京師(けいし)への衛士および辺境への防人の派遣をつかさどった。年代により増減があるが総数約600前後、その9割近くが長安洛陽(らくよう)を中心とする地域に集中して置かれ、それぞれ中央12衛の各衛に統属を定められ、衛士を上番させた。国都防衛を主眼としたものであることがうかがえる。地名にちなんだ府名をつけられ、管区を地団と称し、兵士の定員数によって上府(初め1000人、のち1200人)、中府(初め800人、のち1000人)、下府(初め600人、のち800人)の三等があった。大規模な外征にはむしろ折衝府(軍府)を置かない非軍府州から徴発される臨時の募兵が中心で、玄宗時代にはついに募兵制が優位を占め、府兵は農民層の没落などで定員に満たないありさまとなり、749年機能を停止、官名のみ名誉官的称号として残された。日本の律令(りつりょう)時代の軍団はこの制度に倣ったものである。

[菊池英夫]

『菊池英夫著『府兵制度の展開』(『岩波講座 世界歴史5』所収・1970・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「折衝府」の意味・わかりやすい解説

折衝府
せっしょうふ
zhe-chong-fu; chê-ch`ung-fu

中国,唐代の府兵制の基礎をなす地方設置の軍府。管内の農民を徴兵し,農閑期の訓練,都や国境地帯への勤番兵士の送り込み,出征などの業務を担当した。1折衝府の兵数は平均 1000人で,最盛時には,650前後の折衝府が全国の要地に設置されていた。しかし長安,洛陽地区に重点的に設置されたため,この地区の農民に過大な負担を課することになり,これが府兵制衰微の重要な原因となって,8世紀前半には破綻をきたし,天宝8 (749) 年には折衝府は一切の機能を停止した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「折衝府」の解説

折衝府(せっしょうふ)

唐代に各地に置かれた軍府。府兵の徴集,訓練,番上,動員などをつかさどり,長官を折衝都尉(とい)という。全国に600府ほどあり,その8割は長安洛陽周辺にあった。府兵制の衰微とともに749年機能を停止した。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「折衝府」の解説

折衝府
せっしょうふ

唐の軍制上の地方官庁
折衝都尉を置いて,府兵の徴発・動員・訓練などにあたらせた。最も多いときで634か所を数えたが,大部分は長安と洛陽を中心とし,全国均等に置かれたわけではない。折衝は「敵をくじく」の意。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の折衝府の言及

【軍団】より

…(1)日本古代の律令国家の軍事組織。モデルとした唐の折衝府(せつしようふ)は兵士訓練,中央衛府への兵士供給を主務としたのに対して,日本の軍団制は,軍事指揮権,兵士訓練権をもたない兵士徴発機構としての性格がつよく,また中央衛府(えふ)とのみ結びつくものでなく国内要地の守備兵,防人(さきもり),衛士(えじ),征軍兵士を供給した。軍団は兵士徴発・動員規模により,最大1000人規模,最大500人規模という2種類の編成式をもち,また引率兵士の多少に対応して軍毅(ぐんき)(大毅,少毅,毅),校尉(200人引率),旅師(100人引率),隊正(50人引率)の職員と主帳が配置されていた。…

【唐】より

…このほか,地方官庁の管轄のもとに課された雑徭とよぶ軽い徭役があった。府兵制とは,丁男のなかから3人に1人の割合で折衝府に徴発される徴兵制の軍役であった。折衝府の数は最も多いときで634に達したが,そのうち長安と洛陽とを中心とするごく狭い地域に400府近くをおいて中央を固め,この両都を北東より北西にかけて半月形に取り囲む辺境に近い地帯におよそ200府をおいた。…

※「折衝府」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android