中国,上古から唐の玄宗朝の天宝年間(742-756)までの諸制度を沿革的に通観した政書。200巻。唐の杜佑撰。劉知幾の子の劉秩が開元末に作った《政典》35巻を増補訂正したもので,約30年の歳月を費やして801年(貞元17)に完成したという。内容は食貨12巻,選挙6巻,職官22巻,礼100巻,楽7巻,兵15巻,刑8巻,州郡14巻,辺防16巻の8門からなる。財政経済史ともいえる食貨門を首位におき,選挙,職官をこれに続ける分類配列は,礼法とか天地とかを首位においてきた従来の価値観を一変させた新機軸であった。ただし,礼門に全書の半ばを割き,そのうち〈開元礼〉に35巻を充当していて,社会経済史,法制史のみならず礼制史の研究に際しても便利な書物であり,とくに隋・唐時代にかかわる部分については最重要の文献である。正史の志の項目を通史的に総述した本書は,のちの鄭樵撰《通志》,馬端臨撰《文献通考》とともに〈三通〉とよばれる。
執筆者:礪波 護
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国歴代の制度を通観した書。「つでん」とも読む。唐の杜佑(とゆう)の著で全200巻。上古から唐の玄宗(在位712~756)朝ころまでの制度を、食貨典(財政)、選挙典(官吏任用)、職官典(官制)、礼典(儀礼)、楽典(楽制)、兵典(兵制)、刑典(刑法)、州郡典(行政地理)、辺防典(外国)の九部門に分類して記してある。制度史研究上不可欠の書で、とくに隋(ずい)・唐の部分は史料的価値が高い。本書には杜佑の進歩史観が反映しているという。宋(そう)の鄭樵(ていしょう)『通志(つうし)』、元の馬端臨(ばたんりん)『文献通考(ぶんけんつこう)』とあわせて三通とよぶ。
[谷川道雄]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…中国,書名に通の字を持つ9種類の制度中心の百科全書集。唐の杜佑(とゆう)の《通典(つてん)》,宋の鄭樵の《通志》,元の馬端臨の《文献通考》は,性格は違うが歴代の制度沿革を知るに有用な書で三通と呼ばれてきた。清の乾隆帝は1747年(乾隆12),67年にそれぞれ〈皇朝〉と〈欽定続〉の名を冠した《文献通考》《通典》《通志》6種を勅撰,これらが一括して九通といわれるが,実録,会典などにくらべ,二次史料的でかつ膨大なため,あまり使われない。…
…宋時代の刊本装丁の代表的なものである。刊行当時そのままの原装本はほとんど残っていないが,天理図書館所蔵の《通典》(南宋版,重要文化財)は原装本のおもかげを伝えるもの。日本の例では,高野版《十住心論》(1255刊),浄土教版《西方要決釈疑通規》(鎌倉中期刊)などがある。…
※「通典」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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