繊毛虫類(読み)せんもうちゅうるい

精選版 日本国語大辞典 「繊毛虫類」の意味・読み・例文・類語

せんもうちゅう‐るい【繊毛虫類】

  1. 〘 名詞 〙 原生動物界のなか一門。原生動物の中で最も分化体制がととのっている。体表繊毛でおおわれ、これを動かして移動し、食物をとる。体内には食胞収縮胞などの細胞器官が発達し、無性生殖のほか接合による有性生殖も行なう。海水中淡水中で自由生活し、分布は広い。ゾウリムシツリガネムシなど。〔いのちの科学(1964)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「繊毛虫類」の意味・わかりやすい解説

繊毛虫類
せんもうちゅうるい

原生動物の繊毛虫門Ciliophoraを構成する単細胞生物群の総称。滴虫類(てきちゅうるい)ともよばれた。繊毛をもつ時期があり、大小二型核をもち、横分裂で増殖、従属栄養で食胞を形成することが原則的特徴である。原生動物のうち、体制が最高に分化した群で、概数7500種が報告され、そのうち約3分の2は自由生活、残りは寄生生活である。体長10マイクロメートルから3ミリメートル(スピロストマム)で、繊毛は体全域を覆うものから、部分的に局在するもの、あるいは幼生にのみあるもの(吸管虫類)まである。また、口域の小膜や波動膜、腹面の棘毛(きょくもう)のように捕食や歩行など特殊機能を果たす各種の繊毛複合体をもつものも多く、細胞骨格的な役割を営む体表直下のペリクル下繊維系の構造とともに、分類のための重要な指標となる。この類特有のよく発達した収縮胞、肛門(こうもん)、毛胞、収縮性の糸筋などの小器官のほかに、とくに典型的な細胞口をもち、常食する餌(えさ)のサイズによって簗器(やなき)、周口部、前庭、周口小膜域など、その種に特有の多彩な構造がみられ、強力な水流を生じて餌を巻き込む。吸管虫類は独特な吸管とよばれる棒状突起(微小管よりなる)を使い、餌の内容物を吸引する。わずかな例外(原始繊毛虫類)を除くと、すべての種が二型核性である。小核は有糸分裂を行い、ほぼ普通の核に相当するので、生殖核とよばれる。大核は小核より多量のデオキシリボ核酸(DNA)を含み、その比率は種によって8~6500の広範囲に及び、倍数性と考えられるが確証はない。

 無性的な分裂や出芽のほかに有性生殖の接合によって遺伝子の組換えを行う。配偶体の性別は形態でまったく区別できないものが多いため、このような性別を接合型といい、かなり複雑な遺伝をする。付着性の種ではツリガネムシや吸管虫類のように成体とまったく形態の異なる幼生を生じ、変態するものも多い。この過程で接合型の発現などの成熟現象が伴う。一般に淡水産で遊泳性(ゾウリムシ、テトラヒメナ、スピロストマム)であるが、付着性のもの(ラッパムシ、トリコラ)、腹部の棘毛ではうもの(エウプロテス、スチロニキア)、柄(え)をもち(ツリガネムシ)群体となるもの(ゾータムニウム、エピスチリス)、海産のプランクトン(チンチヌス)などのほか、動物に寄生(バランチジウム、養殖魚に多い白点病など)や共生する種(とくに反芻(はんすう)胃をもつ家畜のルーメン繊毛虫類)など人間の生活との関連も深い。

[石井圭一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「繊毛虫類」の意味・わかりやすい解説

繊毛虫類
せんもうちゅうるい
Ciliata

原生生物界に属する多様な微生物の総称。有機物質を含む水中に生活する微小生物で,枯れ草の浸出液 infusionに湧くため,かつては滴虫類 Infusoriaと呼ばれていた。原生生物のなかでは最も分化の進んだ類である。体表は繊毛で覆われ,核には一般の生活機能を統制する大核と,生殖に関連する小核の 2個があり,口,食道,食胞,肛門,剛毛などいわゆる細胞器官の分化が見られる。二分裂あるいは出芽による無性生殖のほか,接合による有性生殖も行なう。海水,淡水に広く分布し,自由,着生,あるいは寄生生活をしている。代表的なものにゾウリムシラッパムシツリガネムシなどがある。

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