アオバアリガタハネカクシ(その他表記)Paederus fuscipes

改訂新版 世界大百科事典 の解説

アオバアリガタハネカクシ
Paederus fuscipes

甲虫ハネカクシ科アリガタハネカクシ亜科の昆虫。上翅が青藍色または青緑色であることからこの名がつけられた。頭部腹部末端の2節は黒色。その他の部分は橙赤色で体長約7mmで細長い。体液ペデリンpederinと呼ばれる有毒物質を含み,この液が皮膚に付着すると炎症を起こすことがある。とくに線状の炎症(線状皮膚炎)を起こす場合が多い。アメリカ大陸を除いた全世界に分布し,アジアやヨーロッパで被害が見られる。成虫幼虫水田,池畔,川岸など草の生えた湿地に多く生息し,成虫は夏季,灯火に飛来する。土壌中に産卵孵化(ふか)した幼虫は成虫と同様におもに地表で小動物を捕食するが,飼育すると果実類も好んで食する。幼虫期間は約3週間。この間に2~3回脱皮して終齢となり,土壌中に潜って蛹化(ようか),約1週間後に成虫となる。成虫となる期間は6月から10月ごろまで。成虫で越冬する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アオバアリガタハネカクシ
あおばありがたはねかくし / 青翅蟻形隠翅虫
[学] Paederus fuscipes

昆虫綱甲虫目ハネカクシ科に属する昆虫。南北アメリカを除く世界各地に分布するが、暖地に多い。体長約7ミリメートル。細長い体は赤黄色で、上ばねは短くて青緑色に光り、頭、胸下面、腹端は黒い。成虫は年中いるが、主として平地の湿った草地に多く、活発に行動し、雑食だが小虫をよく捕食する。夜間、灯火によく飛来し、人体に留まったときこすったりすると、ペデリンを含む体液が皮膚について線状皮膚炎(みみずばれ)をおこすので有名であり、やけど虫ともよばれる。年2~3世代を繰り返し、幼虫は地面の割れ目などにすみ土中で蛹(さなぎ)になる。エゾアリガタハネカクシなど近似種があるが、おもに山地などに分布し、前種よりやや大きく、後ろばねが短小で飛べない。

[中根猛彦]


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百科事典マイペディア の解説

アオバアリガタハネカクシ

ハネカクシ科の甲虫の1種。体長7mm内外。赤褐色で,頭は黒く,上翅は青い。水田など雑草の茂った湿地にすみ,よく灯火に飛来する。体液中にペデリンを含み,人の皮膚に炎症を起こさせるので知られる。成虫で枯草の下などで越冬。分布は日本全土のほか,米国を除く世界各地。
→関連項目ハネカクシ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

アオバアリガタハネカクシ
Paederus fuscipes

鞘翅目ハネカクシ科の昆虫。体長 6.5~7mm。体は細長い。頭部は丸く,黒色。前胸は黄褐色で前後がくびれる。上翅は藍色で短い。腹部は黄褐色で大部分が露出し,先端部のみ黒い。肢は大部分が黄褐色。湿気の多い地上に普通にみられ,灯火に集る。分泌液にはペデリンという毒素が含まれており,ヒトの皮膚に触れると発疹を起す。日本全土に産し,広く世界に分布する。

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 の解説

アオバアリガタハネカクシ
学名:Paederus fuscipes

種名 / アオバアリガタハネカクシ
解説 / 明かりに集まります。つぶして体液にふれると、皮ふがはれます。
目名科名 / コウチュウ目|ハネカクシ科
体の大きさ / 6~7mm
分布 / 北海道~南西諸島
成虫出現期 / 一年中

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