改訂新版 世界大百科事典 「攻撃防御方法」の意味・わかりやすい解説
攻撃防御方法 (こうげきぼうぎょほうほう)
法律用語。民事裁判においては,その判決の基礎となるべき訴訟資料(主張・証拠の申出)のうち,原告側が提出するものを攻撃方法といい,他方被告側が提出するものを防御方法という。この両者を一括して,攻撃防御方法という。民事訴訟法では,通常〈攻撃又は防禦の方法〉という表現を用いている(45条,156条,157条等)。売買代金の支払を求める民事裁判を例にとって説明するならば,次のようになる。原告は審判の対象(訴訟物)たる代金支払請求権を発生させる事実(請求原因事実)として,原告・被告の間で売買契約が締結され,その約定にもとづき目的物を被告に渡したが,いまだに代金が支払われていない旨の主張をし,もし被告がこの事実の存在を争う場合には,さらにこれを裏づける証拠として,売買契約書等の取調べを裁判所に申し立てることになる。これらの行為は,原告の立場から被告に対して攻撃を加えるものであることから,攻撃方法といわれている。他方被告は,自己の立場を守るために原告の主張している事実を否認したり,または抗弁事実(抗弁)として,たとえば,すでに弁済したと主張したりすることになるが,原告が弁済の事実を否認した場合は,さらに領収証などの書類を証拠として提出して,裁判所による取調べを求めることになる。これらの行為は,いずれも原告による攻撃に対抗して,被告の立場を防御するためのものであることから,防御方法といわれている。攻撃防御方法の提出時期については,現行法はこれを訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなくてはならないとの立場(適時提出主義)を原則としている(民事訴訟法156条)。これに対しその提出の順序とか時期につき法定の序列を設ける法定序列主義や,その提出を同時にすることを求める同時提出主義をとる国もある。
執筆者:納谷 広美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報