裁判所に対し自己の名において裁判権の行使を求めまたは求められる者。刑事訴訟では前者が検察官,後者が被告人である。民事判決手続では前者を原告,後者を被告という。ここでは民事訴訟についてのみ説明する。当事者は,他人の名において訴訟行為をなす法定代理人や訴訟代理人(弁護士)と異なり,自己の名で訴訟をする本人である。訴訟は最低,対立する2当事者の存在を必要とし,相手方が不存在の訴訟は不適法である(二当事者対立構造)。ただし,それぞれの側に立つ当事者の数は複数でもよく,このような訴訟を共同訴訟という。
当事者たることに伴う効果は,双方において平等である(当事者平等の原則)。処分権主義および弁論主義(訴訟資料の収集責任を当事者が負う立法主義)が原則である訴訟においては,当事者は,訴訟を終了せしめる各種の行為(訴えの取下げとその同意等)をなす権限を有し,かつ訴訟資料を提出しまたは提出しない自由,相手方の提出した訴訟資料を争いまたは争わない自由を有する。他方当事者は,訴訟追行の結果たる判決の効力を受け,敗訴の場合訴訟費用を負担する(民事訴訟法61条)。また当事者の同一性は,裁判籍(4条等),裁判官の除斥原因(23条),訴訟手続の中断(124条等),訴訟物の同一性(142条),証人能力等の基準となる。
以上のような重大な効果にかんがみ,訴訟を行うに際し裁判所は,だれが当事者であるかを確定しなければならない(当事者の確定)。何を基準として確定するかにつき,当事者らしい行動とする説,当事者たる意思とする説,訴状の表示とする説(通説),訴訟開始時には訴状の表示を基準とし,判決確定後は前訴の全訴訟過程を総合して判断すべしとする説が対立している。
訴訟当事者たるためには当事者能力と当事者適格がなければならない。当事者能力は,具体的紛争を離れておよそ一般的に自己の名で訴訟をする資格であり,原則として民法の権利能力とパラレルに考えられている。すなわち,自然人はもとより法人もすべて当事者能力をもつほか,法人でない社団または財団でも代表者または管理人の定めがあれば当事者能力をもつとされる(29条)。当事者適格とは,当該具体的な紛争との関係で,その者を当事者として訴訟をさせることによってその紛争が最も有効適切に解決されることとなる,当事者の地位ないし資格をいう。当事者適格は,訴訟追行権とも呼ばれ,これを有する者を正当な当事者という。当事者適格は訴訟要件であり,その欠缺(けんけつ)に対しては訴訟判決(実質審理にはいらず訴えを不適法として却下する判決)がなされる。通常,訴訟物につき対立した利害関係の帰属主体であると主張する者が正当な当事者である。給付訴訟では,訴訟物たる請求権を主張し,その義務者と主張される者がこれである。訴訟物が当事者間の法律関係に限られぬ確認訴訟では,訴訟物たる法律関係の存否不明により生じる自己の法律的地位の不安危険を確認判決をもって除去する利益(確認の利益)を有する者と,かかる事態を生ぜしめている者がこれである。形成訴訟では,正当な当事者は法定されているのが通常だが,とくに行政事件訴訟法9条のいう〈処分又は裁決の取消しを求める法律上の利益を有する者〉(取消訴訟の原告適格)につき,判例は,これは当該処分または裁決の根拠法令の保護する利益を有する者をさすと解している(〈訴えの利益〉の項目参照)。なお,特定の法律関係については,複数人が共同訴訟人となることが当事者適格の要件とされる(固有必要的共同訴訟)。以上のような正当な当事者に代わりまたは並んで,第三者が当事者適格を有することもある(訴訟担当)。訴訟担当には,法律の定めにより第三者が当然に当事者適格を有する法定訴訟担当と,本来の利益帰属主体の授権に基づき第三者に当事者適格が生じる任意的訴訟担当がある。訴訟担当者による訴訟の判決の既判力は,被担当者に及ぶ(民事訴訟法115条1項2号)。
執筆者:山本 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
自己の名において、ある訴訟事件につき裁判所に対して民事裁判権の行使(判決や強制執行など)を求める者、およびこれに対立する相手方をいう。判決手続についていえば、訴えまたは訴えられることによって判決の名宛(なあて)人となる者である。
(1)破産者の財産に関する訴訟では破産管財人に訴訟当事者となる資格が与えられているなど(第三者の訴訟担当)、訴訟当事者は訴訟の対象となっている権利関係の主体である必要はない。
(2)訴訟代理人である弁護士や親権者等の法定代理人などは、自己の名においてではなく、他人の名で他人にかわって訴訟を追行する者であって、当事者ではない。
(3)自己の名で訴訟に関与するが、判決の名宛人でない補助参加人(民事訴訟法42条)や、他人に対する判決の効力を受けるだけの者(同法115条)も当事者ではない。当事者はその関与する訴訟手続の種類に応じてさまざまな名称を与えられている。たとえば、判決手続における第一審では原告・被告、第二審では控訴人・被控訴人、上告審では上告人・被上告人とよばれている。
当事者をめぐってはいろいろな問題がある。どのような当事者概念をとるか、当事者にいかなる地位を認めるか、当事者がだれかをどのような基準で確定するか(当事者の確定)、当事者が訴訟当事者となりうる資格(当事者能力)をもつか、単独で有効に訴訟行為をなす能力(訴訟能力)を有するか、その当事者間に本案についての判決をするのが、紛争を解決するのに適切であるとするような資格(当事者適格)があるのか、などがそれである。当事者は、憲法上の裁判を受ける権利に基づいて裁判所に裁判を求める者として、訴訟の主体であり、かつての糾問主義の時代におけるような取調べの客体にとどまるものではない。したがって、この当事者には、口頭弁論において自己に有利な主張・立証を行う権利など、訴訟を進めるうえでいろいろな権利が認められており、こうした訴訟の主体たる地位において当事者に認められる権利を総称して当事者権とよぶ。この当事者権が保障されていることによって、訴訟の結果は、当事者の訴訟追行の結果であると評価することができ、敗訴の結果も当事者の自己責任に帰せしめることが可能となる。
[池尻郁夫]
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