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政治を人間のパーソナリティーや心理という角度から分析しようとするアプローチをさす。これまで、政治学は政治を対象として、これをさまざまな角度から考察する個別科学として発展してきた。一方、人間のパーソナリティーや心理を社会との関連で分析する個別科学として発達したものが社会心理学である。政治心理学とは、この政治学と社会心理学の交錯する領域に成立するところの政治学、もしくは、社会心理学の下位科学と考えることができる。
現代政治学は、1920年代のアメリカでメリアムを中心とするシカゴ学派の政治学の科学化を指向する革新運動、いわゆる行動論革命を通じて発展してきた。彼らは分析の基本的単位に政治行動を据えたが、それは当時、隆盛を極めたアメリカ心理学におけるワトソン流の行動主義に由来するものであった。また、直接観察できない刺激とこれに反応する行動を媒介する心の測定、すなわち認知、評価、選好等から構成される心理学的態度研究やフロイトの精神分析学の影響は、この学派の共通の特色であった。もっとも、このような研究は政治学の領域では政治行動論political behaviorとよばれ、行動科学の成立と相まって今日では、政治学における行動論的アプローチとよばれることも多い。
したがって、政治心理学ということばは、欧米ではどちらかといえば、社会心理学者が社会心理学的分析手法を用いて政治の分析を試みた社会心理学の下位科学をさす場合が多かった。1910年『政治心理学』La psychologie politiqueと題する最初の書物が、社会心理学の父、フランスのル・ボンによって著されたし、第二次世界大戦後、1954年に発刊されたその後の本格的政治心理学の書『政治の心理』The Psychology of Politicsもイギリスの心理学者アイゼンクの手によるものである。もっとも日本では1914年(大正3)政治学者稲田周之助(いなだしゅうのすけ)(1867―1927)によって『政治心理学』という本が出版され、第二次世界大戦末期、戦火のなかでまとめられ、戦後の政治学再建の口火を切る『政治心理学』を著したのも政治学者中村菊男(1919―1977)であった。アメリカでもH・ラスウェルやF・I・グリーンスタインFred Irwin Greenstein(1930―2018)など政治学者の手による政治心理学の研究成果も多い。政治心理学の主要な研究対象としては、大衆社会、リーダーシップ、政治的パーソナリティー、イデオロギー、政治的社会化、世論、政治宣伝といった諸領域をあげることができる。
[堀江 湛]
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