大学および短期大学において、教職を希望する学生のために、教育職員免許法(昭和24年法律147号)の規定に基づいて、教員免許状が取得できるように特設した教育課程のことである。
現行制度は、教員養成のための特別の機関を設けることなく、免許法の定める条件を満たせば、いかなる大学においても免許状が取得できるという開放制をとっている。免許法は、免許状授与の所要資格として、専門科目(教科に関する専門科目と教職に関する専門科目)について、免許状ごとに最低修得単位を定めている。大学はこれに従って専門科目を設けなければならず、このために特設された教育課程が教職課程とよばれる。
教職課程の設置を希望する大学は、所要の手続をもって文部科学省に申請し、課程の認定を受けなければならない。つまり、現行制度は、医師・看護師の免許のように個々人を検定するかわりに、大学を審査認定し、この認定された大学の授与した単位に基づいて免許状を授与するという方法をとっているのである。2008年(平成20)の時点で、教職課程を置いている大学および短期大学の数と比率は、以下のとおり。大学では国立77校(93.9%)、公立46校(63.0%)、私立459校(80.0%)、合計582校(79.8%)、短期大学では、国立0校(0%)、公立13校(54.2%)、私立264校(73.1%)、合計277校(71.9%)となっている。大学院も大学とほぼ同じ傾向にある。大まかにいうと、小・中学校(義務教育学校)の教員は主として国立の教育大学・学部で養成し、中学校の一部および高等学校・幼稚園の教員の多くは私立などの一般大学で養成されている。私立大学の教職課程の特徴は、私学の建学の理念に基づく個性的な教員の養成を目ざすところにあり、個性重視の教育を進める今日、この教職課程の役割と整備は重要である。
教育改革の流れのなかで、大学の教職課程の質的水準の向上を目ざし、教職科目として「教職実践演習」の新設と必修、また教育実習の充実と改善が図られた。そして、教職課程の実態に問題がある場合は、文部科学大臣による是正勧告となり、是正が行われない場合には教職課程の認定取消しも認められた(平成20年教育職員免許法施行規則の改正)。一つの大きな課題は、教職科目のうち、教科教育および臨床的な教育学・心理学そして教育実習のいっそうの充実である。近年、カリキュラム開発センターや教育実践総合センター等の臨床部門が設置され、活動を広げつつある。
[津布楽喜代治]
『日本教師教育学会編『日本教師教育学会年報 第5号 教育者に求められる教養』(1996・日本教育新聞社出版局)』▽『浦野東洋一・羽田貴史編『変動期の教員養成――日本教育学会課題研究「子ども人口減少期における教員養成及び教育学部問題」報告書』(1998・同時代社)』▽『清水俊彦編『ザ・特集No.7 教員制度の改革』(2007・教育開発研究所)』▽『教師養成研究会編著『教育実習の研究 改訂版』(2008・学芸図書)』▽『教職問題研究会編『教職論――教員を志すすべてのひとへ』第2版(2009・ミネルヴァ書房)』▽『西園芳信・増井三夫編著『教育実践から捉える教員養成のための教科内容学研究』(2009・風間書房)』
教職員免許状授与の資格を得るためには,教育職員免許法が規定する基礎資格を修得し,かつ大学が開設する教職課程において必要な専門科目の単位を修得しなければならない。その上で,本人が都道府県教育委員会に申請して認められれば,全国で効力を有する教員の普通免許が授与される。幼稚園,小学校,中学校,特別支援学校の各教諭のそれぞれについては専修,一種および二種の3種類の免許がある。高等学校教諭には専修と一種の2種類の免許がある。基礎資格について,たとえば小学校教諭の一種免許状では学士の学位が,また専修免許状では修士の学位が必要である。教職課程では,①教科に関する科目,②教職に関する科目,③教科または教職に関する科目,④特別支援教育に関する科目のそれぞれについて修得すべき最低の単位数が教育職員免許法で定められている。それぞれの大学の教職課程は,文部科学大臣により「課程認定」を受けたものであるが,その審査は中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会の付託を受けて,課程認定委員会が行っている。
著者: 小笠原正明
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