知的、聴覚、視覚などに加え、肢体不自由や病弱など障害の程度が比較的重い子どもを対象とし、幼稚部から高等部までがある。専門的な知識を持つ教員を配置し、障害に配慮した教科書や施設を使用。複数の障害のある子どもに対応するため、従来の盲学校、ろう学校、養護学校が2007年度から一本化された。22年5月現在、全国で高等部は1021校あり、約6万5千人が在籍。うち知的障害の生徒が約6万1千人を占める。
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特別支援教育のもとで障害のある子供たちに教育を行う学校。
特別支援教育は、近年のノーマライゼーション(高齢者や障害のある人を隔離するのではなく、ともに暮らす社会がノーマルとする考え方)の進展や子供の障害の重度・重複化や多様化などの社会の変化を踏まえて、2006年(平成18)6月に学校教育法が改正されたのに伴って、2007年4月から、特殊教育を継承・発展させるものとして始まった教育制度である。そのなかで、特別支援学校は、これまでの盲学校、聾(ろう)学校、養護学校(以下「盲・聾・養護学校」という)にかわる学校として創設されたものである。その教育の対象となる子供たちの障害の種類は、基本的には盲・聾・養護学校と同じである。すなわち、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱(身体虚弱を含む)の五つの障害とこれらの重複障害である。しかし、盲・聾・養護学校が障害種別に設けられていたのに対して、特別支援学校は、障害種別を超えて、複数の障害に対応した教育を行うことができるようになっている。このため特別支援学校においては、その学校が行う教育の障害種別を明らかにし、その情報を積極的に提供することになっている。
特別支援学校の目的は、学校教育法第72条に示されており、これまでの盲・聾・養護学校と同様に、小・中学校などに準ずる教育を行うこと、学習上や生活上の困難の改善・克服に必要な知識技能を授けることとされている。
特別支援学校の教育課程は、基本的には、小・中学校などと同じであるが、障害に基づくさまざまな困難を補う特別の指導を行う領域として「自立活動」が設けられている。そして、指導内容や指導方法は、盲・聾・養護学校と変わらない。
また、特別支援学校には、障害のある子供たちの教育に加えて、いわゆるセンター的機能として、障害により教育上特別な支援が必要な小・中学校などの子供たちに対して助言や援助を行うことが求められている(学校教育法74条)。
具体的にどのような特別支援学校を設置するかは、各都道府県などが、地域における教育に対するニーズなどに応じて弾力的に判断することになっている。したがって、複数の障害に対応した学校を設置できるとともに、これまでのように特定の障害だけに対応した学校を設置することもできる。
なお、特別支援教育の学校制度として、特別支援学校のほかに、小・中学校における特別支援学級や通級による指導(通常の学級に席を置き、障害の状態によって特別な指導を通級指導学級で受ける)もある。
特別支援学級は、これまでの特殊学級の名称が改められたもので、対象となる子供の障害の種類や程度、指導内容や指導方法は、特殊学級の場合と同じであるといってよい。ただし、対象となる障害に含まれていた「情緒障害」が「自閉症・情緒障害」とされ、対象の明確化が図られている。
また、通級による指導は、1993年(平成5)4月に制度化されたものが引き継がれているが、対象となる障害に関しては、2006年3月に学校教育法施行規則が改正され、情緒障害者の分類を整理し「自閉症者」が独立して規定されるとともに、新たにLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)の子供たちが対象とされた。
[鈴木 篤]
『越野和之・青木道忠編『「特別支援教育」で学校はどうなる』(2004・クリエイツかもがわ)』▽『佐藤泰正著『特別支援教育概説』(2007・学芸図書)』▽『国立特別支援教育総合研究所著『特別支援教育の基礎・基本――一人一人のニーズに応じた教育の推進』(2009・ジアース教育新社)』
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