日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金
しんがたころなういるすかんせんしょうきんきゅうほうかつしえんこうふきん
新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)に立ち向かう医療・福祉機関に支給した国の助成金。医療・介護・障害福祉機関で働く人に対する最大20万円の慰労金と、感染を防ぐ医療体制を緊急強化する助成金の大きく二つの柱からなる。医療・福祉機関で感染症が集団発生した状況を踏まえ、医療・福祉体制を緊急整備すると同時に、高リスク感染症に対処する人々を経済支援することで、継続的に医療・介護・障害福祉サービスを提供するねらいがある。政府は2020年度(令和2)第1~3次補正予算と2021年度予算で計約8兆7400億円を計上。国(厚生労働省)から都道府県を通じて支給するが、自治体の受け入れ態勢の遅れも考慮し、自治体を経由せず、国から直接医療機関へ助成する仕組みも一部取り入れた。
慰労金は、感染症患者を受け入れた日から2020年6月末までの間の感染リスクの大きさに応じて支給。(1)重点医療機関、PCR検査センター、介護施設、老人ホーム、障害福祉施設などで感染症患者や濃厚接触者と接した医療従事者・職員に1人一律20万円、(2)重点医療機関などで感染症患者らと接しなかった医療従事者・職員に1人一律10万円、(3)その他の病院、診療所、訪問介護ステーション、助産所の医療従事者・職員や介護・障害福祉施設で働く職員に1人一律5万円を支給した。
また医療体制の整備では、感染者病棟・病床、宿泊療養施設、人工呼吸器、人工肺、陰圧装置、治療薬、防護服、マスク、消毒液、保健所や相談窓口の補充、医療チームの派遣などの費用を助成した。助成上限額は、病院には200万円に病床数ごとに5万円を加算した額、医科・歯科などの有床診療所には200万円、無床診療所に100万円、薬局・訪問介護ステーション・助産所に70万円。介護施設の助成上限額は、通所介護施設で89.2万円、訪問介護施設で53.4万円、特養施設で定員に3.8万円を掛けた額。このほか緊急事態宣言などで休止した介護サービスを再開するため、介護在宅サービス事業者に利用者1人当り1500~6000円を、障害福祉関係の相談・在宅サービス事業には利用者1人当り1500~2500円をそれぞれ助成。感染防止のための換気設備や飛沫(ひまつ)防止パネルなどの整備費として20万円を上限に助成した。
[矢野 武 2021年4月16日]