三密(読み)さんみつ

精選版 日本国語大辞典 「三密」の意味・読み・例文・類語

さん‐みつ【三密】

〘名〙 仏語。秘密の身・口・意の三業。すなわち、仏の身体言語と心によってなされる不思議なはたらき。また、密教行者が手に契印を結ぶ身密と、口に真言唱え口密(くみつ)と、心に本尊を観ずる意密とをいう。
※即身成仏義(823‐824頃)「謂三密者一身密二語密三心密

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デジタル大辞泉 「三密」の意味・読み・例文・類語

さん‐みつ【三密】

密教で、身・・意の三業さんごう。手に印を結ぶ身密、口に真言を唱える口密くみつ、心に本尊を観念する意密。
感染症蔓延を防ぐために、人々が避けるべき3つの行動換気の悪い密閉空間に居ること・多くの人が密集する場所に居ること・近距離での密接した会話をすること。令和2年(2020)、COVID-19流行の際に東京都が提唱した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三密」の意味・わかりやすい解説

三密
さんみつ

仏教用語。秘密の三業(さんごう)(身(しん)・口(く)・意(い)によって行われる理想的行為)の意。すなわち身密・語密(口密)・意密(心密)の三で、おもに密教でいう。顕教(けんぎょう)では、凡人では推し測れない仏の三業をいうが、密教では、仏の三業は体(たい)・相(そう)・用(ゆう)の三大のなかの用大(真如(しんにょ)の働き)であって、衆生(しゅじょう)の三業もまたその隠された本性においては仏の三業とまったく同じであるとして三密という。

[小野塚幾澄]

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百科事典マイペディア 「三密」の意味・わかりやすい解説

三密【さんみつ】

仏教用語。密教で仏の身・口・意の三つの働きが衆生の思慮の及ばざるものであることを示す言葉。また衆生の三業(身口意(しんくい))もそれと相応すると説く。法身の動きと衆生の動きが一致するのが〈無相の三密〉,身に印(いん)を結び,口に真言を唱え,意(こころ)に本尊を念ずるのが〈有相の三密〉。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三密」の意味・わかりやすい解説

三密
さんみつ

仏教用語。主として密教でいわれ,身密,口密,意密の総称。仏の身体と言葉と心によって行われる3つの行為は,不思議であることから三密と称される。また衆生の身体と言葉と心によって行われる3つの行為も,その隠された本性においては仏の三密と同等であるとされる。

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世界大百科事典(旧版)内の三密の言及

【真言】より

…その上に仏の行動をシンボライズする印を手で結び,仏の正覚を心に念じて仏と同体化しようとした。これが三密(口密,身密,意密)瑜伽(ゆが)による即身成仏の実践である。空海(弘法大師)はこのような即身成仏によって仏の加持力を発揮し,衆生の諸願を満足させる目的で,密教による一宗派を開いた。…

【仏教】より


[密教の形成]
 哲学的論争と精密な理論の確立は,他面,大乗仏教から宗教運動としての迫力を薄くしたようで,民衆の新しい要求は新宗教運動として密教を生み出した。密教は仏の絶対性が超越的なものというより,人間に内在的に働くことを強調し,これを如来の三密(身・口・意による3種の秘密業)による加持(仏が絶対的慈悲から,衆生のために身・口・意のさまざまな形を示し,その形の中に住すること)と説明する。その由来するところは,ベーダ以来のインド的な,言葉のもつ呪力に対する崇拝にあり,大乗経典でも陀羅尼の形で多く説かれている(密教でいう真言,すなわちマントラとは,元来,ベーダの文句のもつ呪力を指す。…

※「三密」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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