六訂版 家庭医学大全科 「〈新1類〉痘瘡」の解説
〈新1類〉痘瘡(天然痘)
〈新1類〉とうそう(てんねんとう)
Smallpox
(感染症)
どんな感染症か
天然痘は通称名で、医学用語では痘瘡といいます。紀元前1万年以上も前からアジア、アフリカの農村で出現し、人類史上最も致命率の高い感染症として恐れられてきました。20世紀だけでも2~3億人が死亡したとされています。
痘瘡はヒトからヒトへしか
WHOの天然痘根絶計画
根絶計画が開始された1967年ころ、痘瘡は世界の33カ国で流行状態にありました。10年後の1977年10月26日、アフリカ・ソマリアの男性例を最後に、この疾患の歴史が幕を閉じました。2年間のサーベイランス(患者の有無の確認)がなされ、1980年に「根絶宣言」が出されました。
その後、痘瘡ウイルスは、自由主義国では米国(アトランタ)、共産主義国では旧ソ連(モスクワ)に保有ウイルスが移管され、一定期間保管後廃棄することになり、現在まで10回の会議が開かれていますが、まだ廃棄はされていません。
2001年9月の米国における航空機乗っ取りによる同時多発テロ、続く10月の
痘瘡ウイルスと病気
痘瘡ウイルス(variola)はポックスウイルス科のオルソポックス属に属し、ウイルスのなかで最も大きいものです。DNAを核酸としてもちます。このウイルスはヒトからヒトへしか感染せず、発熱後2~3日で解熱し、発疹が出始めてから感染性をもちます。
ウイルスは血中に入って全身に感染し、皮膚に水・膿疱を形成して
実験室診断としては、電子顕微鏡によるウイルス粒子検出、ウイルス抗原・ウイルス遺伝子の検出、ウイルス分離などがあります。
予防と治療の方法
ワクチンは極めて有効です。現在日本が保有する細胞培養ワクチン(LC16m8)は世界で最も優れており、従来あった副作用がほとんどみられません。なお、本症には特異的治療法はありません。
倉田 毅
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報