暗順応(読み)アンジュンノウ

デジタル大辞泉 「暗順応」の意味・読み・例文・類語

あん‐じゅんのう〔‐ジユンオウ〕【暗順応】

暗い所で目が慣れて、しだいに物が見えるようになること。⇔明順応

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「暗順応」の意味・読み・例文・類語

あん‐じゅんのう ‥ジュンオウ【暗順応】

〘名〙 明るい所から暗い所にはいった時、はじめは見えない光が、時間がたつにつれて見えるようになること。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「暗順応」の意味・わかりやすい解説

暗順応
あんじゅんのう

光の強さに対する網膜の感覚順応の一つ。明るい所からいきなり暗い所に入ると、最初は何も見えないが、しばらくたってから物が見えてくる。このように暗さに目が慣れてくる現象を暗順応とよぶ。

 暗順応は暗順応計で測ることができる。あらかじめ一定の明順応光を与えておき、暗所で一定のテスト光に対する閾値(いきち)を求める。得られた暗順応曲線は、暗所に入ってから7分間ぐらいで折れ曲がりが生じる。これをコールラウシュKohlrauschの屈曲点という。暗順応の程度は網膜の場所により差が生じ、中心部は順応能力に乏しく、周辺部になるほど増大する。初めは網膜視細胞の錐体(すいたい)(錐状体)がおもに働き、錐体の順応で約10倍の感度を増す。暗順応が進むにつれて桿体(かんたい)(桿状体)の感度が高まり、錐体にとってかわる。桿体の順応によって感度は約1万倍に増す。このために暗順応曲線には折れ曲がりが生じる。

 暗順応が完了するのに約1時間を要するが、逆に暗い所から明るい所に出てまぶしさがなくなるまで(明順応)には1、2分しかかからない。暗順応は桿体内にある視紅ロドプシン)が暗所で徐々に合成される時間に一致する。暗所で視紅が合成されて桿体に集まり、その働きを敏感にさせるわけである。暗順応が障害された状態夜盲症(俗に鳥目)というが、網膜色素変性症小口(おぐち)病、白点状網膜炎、特発性夜盲症(ビタミンA欠乏症)などが含まれる。ビタミンAは視紅の合成にたいせつな成分であるため欠乏症は夜盲になる。

大島 崇]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「暗順応」の意味・わかりやすい解説

暗順応 (あんじゅんのう)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「暗順応」の意味・わかりやすい解説

暗順応
あんじゅんのう
dark adaptation

明るいところから暗い部屋に入ると,初めは物が見えにくいが次第によく見えるようになる。これは暗闇に入ると眼の網膜の光に対する感度が時間とともに増加するためで,この自動調節現象を暗順応という。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「暗順応」の解説

暗順応

 明所から暗所へ移ったときに,徐々に暗さに慣れてくる現象.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の暗順応の言及

【光覚】より

…明るいところから暗所へ移ると,はじめはほとんど何も見えないが,慣れることによって,しだいにうす暗いものが見えるようになる。このような暗所への光覚の順応を暗順応dark adaptationといい,逆に明所への光覚の順応を明順応light adaptationという。これは明所では網膜の感度を下げて多くの光量を受け入れ,暗所では感度を上げて光に反応していく生体の調節機構の表れである。…

【照明】より

…このように目の網膜には明るさに応じて感光度を大幅に変える働きがあり,これを順応という。暗い場所に入って網膜の感光度が高くなる場合を暗順応,逆に明るい場所に出て感光度が低くなる場合を明順応という。動的な照明環境を設計する際に,順応は考慮しなければならない重要な現象である。…

【窒素酸化物】より

…慢性気管支炎患者ではさらに低濃度での影響が報告されている。明るいところから暗いところへ移ると,眼は光への感受性を増加させる(暗順応という)が,NO2は0.1ppm以下で暗順応に影響を与える。大気汚染などの環境因子から窒素酸化物の影響を分離することはむずかしく,そのため窒素酸化物単独の慢性影響を評価することも困難であるが,最近では硫黄酸化物以上の注目を集めている。…

【目∥眼】より

…暗所では杆状体が働くから,視野の周辺部が比較的よく見え,色は感じない。杆状体が主として働いている状態を暗順応といい,錐状体が主として働いている状態のことを明順応という。明るいところから急に暗いところに入ると,初めは見えないがだんだん見えてくる。…

※「暗順応」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android