網膜色素変性症(読み)もうまくしきそへんせいしょう

  • (眼の病気)
  • Retinitis pigmentosa
  • もうまくしきそへんせいしょう マウマクシャウ
  • もうまくしきそへんせいしょう〔マウマクシキソヘンセイシヤウ〕
  • 網膜色素変性症 Retinal Pigmentary Dystrophy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

網膜内で視覚機能を担う視細胞が徐々に変性し,視力が低下していく遺伝性進行性の眼疾患。初期には夜盲症視野狭窄が起き,年をとるにつれて両眼の視力が低下する。白内障や色覚異常を伴って失明にいたる場合もあるが,進行速度や発症年齢,重症度などには個人差が大きい。 4000~8000人に1人の頻度で発症し,男女差はほとんど認められない。遺伝性の疾患と考えられているが,遺伝子異常の詳しい仕組みはまだ明らかでなく,1996年に厚生省から難病の指定を受けた。根本的治療法はないが,治療用サングラスなど補助器具の使用や,ビタミンA,循環改善薬などの投与が進行を遅らせることもある。遺伝子治療網膜移植,人口網膜などが研究・実験段階にあり,新しい治療法として期待されている。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

網膜に異常が起き、暗闇で見えにくかったり、視野が狭まったり、視力が低下したりする進行性の難病。老年で社会的失明(矯正視力約0・1以下)となる例も多い。数千人に一人の割合でいると言われている。

(2015-05-28 朝日新聞 夕刊 2社会)

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デジタル大辞泉の解説

加齢につれて網膜が変性する遺伝性の病気。夜盲症・視野狭窄(しやきょうさく)の症状がみられ、視力が低下し失明に至る。

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家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 年をとるにつれて網膜が変性し、徐々に両眼の視力が失われる遺伝性の病気です。
 赤ちゃんのころにはなんの異常も現われませんが、思春期ごろになると夜盲症(やもうしょう)(暗いところではものが見にくくなる)や視野狭窄(しやきょうさく)(目で見える範囲が周辺から欠け、だんだん狭くなってしまう)が少しずつ進んできます。
 ただし、症状の出始めのころは、視力の低下はそれほど顕著でないため、ほとんど不自由を感じることはありません。
 しかし、年をとるにつれて視野狭窄が悪化し、めがねをかけても字が読めなくなるほど視力が低下します。白内障(はくないしょう)も合併しますが、これは手術で治療できます。
 この病気は、厚労省の特定疾患(とくていしっかん)(難病(なんびょう))に指定されており、治療費の一部は公費で支払われます。
[原因]
 遺伝性の病気と考えられています。網膜には、光を感じる視細胞(しさいぼう)と、そのはたらきを助ける網膜色素上皮細胞(もうまくしきそじょうひさいぼう)とがありますが、これらが年とともに変性し、はたらきが失われます。その結果、網膜全体の変性が徐々に進行し、視力や視野が強く障害されます。
[検査]
 視力・視野検査、暗順応検査(暗いところで、どれだけ対応できるかを調べる検査)、網膜電位検査、眼底検査などが行なわれます。
[治療]
 現在、この病気の進行を止める治療法はありませんが、細胞のはたらきを助けるため、血液循環をよくする薬やビタミン剤が使用され、暗順応を改善させる薬が使用されることもあります。
 少しでも網膜を保護するため、強い光は避けるようにし、サングラスや網膜を保護するイエローレンズのめがねを使用します。
 最近、この病気の原因遺伝子が次々に発見されていますので、将来は遺伝子治療が可能になるかもしれません。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

夜盲をきたす代表的な遺伝性疾患で、特定疾患(難病)に指定されている。網膜の視細胞の一つである桿体(かんたい)が遺伝性に障害されるところから桿体ジストロフィーともよばれる。遺伝形成には常染色体劣性と優性のものとがある。劣性遺伝のものは両親に近親結婚のことが多く、子供のころに発病し、夜盲の程度もしだいに悪化するとともに、視野が周辺部のほうからしだいに狭くなってくる。最後には視野の中心のごくわずかな部分が見えるだけになる。これに対し、優性遺伝のものは発病も遅く、進行も遅い。眼底には鳥の足跡状の特有な色素斑(はん)が認められ、血管が細くなり、視神経乳頭にも萎縮(いしゅく)がみられるようになる。網膜は中心部を除いて、ざらざらした感じの変性状態を示すようになる。

 治療法としては、循環改善剤を投与し、強い光線がこの病気を進行させることがわかっているのでサングラスをかける。

 人生の問題で悩みが生じた場合は遺伝相談を受け付けている病院が多い。

[松井瑞夫]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 網膜の細胞が退行性変化に陥り色素が沈着して、わずかに目の中心部にだけ健全な部分を残す病気。遺伝による。視野が狭くなり、ついには失明する。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 網膜の神経細胞が徐々に死んでいくことにより変性萎縮(へんせいいしゅく)(おちい)り、その後に黒い色素が沈着してくる病気です(図47)。最初に障害が起こる神経細胞は()細胞、なかでも暗い所ではたらく杆体(かんたい)細胞です。

 いろいろな病型があるため、発症の時期、症状、進み方などに広い幅があり、人によってさまざまです。日本では、3000~8000人に1人くらいの割合で発症すると考えられています。

原因は何か

 遺伝子の異常で起こる病気です。遺伝子異常の種類は、無数といってもよいほどたくさんあることがわかっており、その違いによって、多様な臨床像や経過をとると考えられています。遺伝の形式は、おおよそ常染色体優性(じょうせんしょくたいゆうせい)劣性(れっせい)、X連鎖性(れんさせい)、孤発性の4つがあります。

症状の現れ方

 代表的な症状は夜盲(やもう)視野狭窄(しやきょうさく)、視力低下、羞明(しゅうめい)(まぶしい)などです。多くの場合、最初に自覚する症状は夜盲です。日が暮れるとよく見えない、暗い所に急に入るとまったく見えない、時間がたってもほかの人のようには見えてこないなどです。逆に、明るい所でまぶしいという症状もあります。

 視野狭窄が進むと、歩く時や自転車に乗った時に足元がわかりにくかったり、横から出てくる人や車に気づきにくくなったりします。視力は長期間正常に保たれることもありますし、早期に低下することもあります。

 白内障を合併することも多く、その場合はかすみ感が現れます。

検査と診断

 眼底検査、視野検査、暗順応(あんじゅんのう)検査、網膜電図検査などで診断されます。眼底検査で、特徴的な眼底所見があれば診断は難しくありません。視野検査では求心性狭窄(きゅうしんせいきょうさく)輪状暗点(りんじょうあんてん)などがみられます。網膜電図は特徴的で、初期から大きく振幅が低下する、あるいは消失するなどがみられ、診断を確定するのに有力です。

治療の方法

 薬物ではビタミンA、E、血管拡張薬などが一般的ですが、今のところ確実に有効という方法は見いだされていません。現在、精力的に研究が進められている遺伝子治療、移植医療、再生医療、人工網膜など先端的医療の臨床応用が実現すれば、治療が可能になるでしょう。

 根本治療はできませんが、症状に応じて対策を考えることは重要です。羞明には遮光(しゃこう)眼鏡の装用、残されている視機能を有効に活用するには弱視(じゃくし)眼鏡、拡大読書器などが有用です。また、白内障を合併している場合には、白内障手術・眼内レンズ挿入が効果的です。

病気に気づいたらどうする

 専門医に診断してもらい、自分の病気を正しく理解することがまず必要です。網膜色素変性症をめぐっては、患者さんの数が多いこと、遺伝病であること、治療が困難であることなどから、さまざまな問題、混乱があると感じています。病気を正しく理解することから始め、残存視機能の活用を考えること、カウンセリングを受けることが有意義と思います。

河野 眞一郎


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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