光刺激により生じる感覚で,光(ひかり)感覚ともいう。広義には視覚を含める。ヒトの場合には光覚器として目しか持っていないので,光覚と視覚はまったく同じであるが,動物によっては通常の目のほかに,別に光覚器をもっていたり,あるいは目に相当する光覚器がひじょうに未分化なものがある。このような動物では視覚器以外の光覚器で生じる感覚や,未分化な目による感覚は,発達した視覚器による感覚とは異なった,あるいは別種の感覚と考えられるので,これらを狭義には光覚と呼ぶ。例えば,脊椎動物のうちの爬虫類や魚類には,通常の目のほかに頭頂部頭蓋内に顱頂(ろちよう)眼があり,視覚とは異なる光覚を生じている。また無脊椎動物でも,例えば昆虫の成虫には複眼のほかに単眼をもつものがある。また軟体動物には,2種類の目や視覚器のほかに皮膚光覚器をもつものもある。さらに上記のほかに体内で神経細胞が光刺激により応答する光感受性神経細胞をもつ動物もいる。一方,視覚器そのものが未分化で,眼点あるいは皮膚光覚器しかもたないものもある。これらの光覚器は,いずれも一般に光の強弱にしか応答できないので,図形識別や色彩弁別,運動検知などはできず,明暗感覚にのみ関係するか,あるいは漠然とした光源の方向の識別という原始的視覚に関係している。2種類以上の光覚器をもった動物で,これらの光覚器による感覚が,互いにどう関係しあっているかはまだ明らかにされていない。
執筆者:立田 栄光
医学では,視覚のうち光刺激の波長の違いを識別する感覚を色覚と呼ぶのに対応して,明暗の違いを識別する感覚を光覚light senseと呼ぶ。ヒトの光受容体は網膜にある視細胞で,これには網膜の中心部にある錐状体(錐体ともいう)と杆状体(杆体ともいう)の2種があり,明所では錐状体が,暗所では杆状体が光覚に関与する。明るいところから暗所へ移ると,はじめはほとんど何も見えないが,慣れることによって,しだいにうす暗いものが見えるようになる。このような暗所への光覚の順応を暗順応dark adaptationといい,逆に明所への光覚の順応を明順応light adaptationという。これは明所では網膜の感度を下げて多くの光量を受け入れ,暗所では感度を上げて光に反応していく生体の調節機構の表れである。明順応状態から暗順応へは数十分を要するが,暗順応状態から明順応へは数分で完了する。
臨床的には,光覚は,認めうる最小の強さ,すなわち暗順応状態における光刺激閾値(いきち)を測ることで検査される。この器械を順応計といい,認知できる明るさの程度と時間経過を測定する。光覚の障害では,網膜の感度が上昇しないため暗順応が障害され,暗所,夜間の視力が不十分となる夜盲症(鳥目),明順応が障害されるため,通常の光量でも強いまぶしさを感じ,視力が下がる昼盲などがある。なお,視力表記では,明暗の弁別ができる程度の状態を〈光覚弁〉という。
→視覚
執筆者:小林 義治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…動物における光刺激を受容する感覚器官をいうが,散在皮膚光覚器のように,形態視ができないものは除く場合がある。目は,体の正中線またはその近くにある中央眼と体の両側方にある側眼に大別される。…
※「光覚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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