中国,清代中期の小説家。名は霑(てん),雪芹は字号の一つ。康熙末年,南京の織造を数代務めた満州八旗の名門に生まれた。幼少年期には,曹家とその姻戚はなお小康を得ていたが,雍正朝(1723-35)の中葉に至り,当主の父(?)曹頫(そうふ)が政治的な背景もあってか罪に問われ,北京に護送されて曹家は取りつぶされた。まもなく曹雪芹は北京に移ったらしく,晩年はその西郊に住み,不遇に終わった。絵心に恵まれ,詩をよくしたが,《紅楼夢》一作で今に知られる。この長編は曹家の栄枯の歴史をフィクション仕立てでつづったものといえ,曹家が〈犯罪〉を招いた官界の構造を告発し,その無実を訴えんとする意図が隠されていよう。主人公賈(か)宝玉は作者の青春像の投影かとも見られる。脂硯斎ら肉親,知友の協力と励ましを受け,10年以上にわたって改訂を重ねるうち,貧困のため一子を病没させ,感傷のあまり未完のまま世を去った。
執筆者:伊藤 漱平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、清(しん)代の小説家。名は霑(てん)。字(あざな)は芹圃(きんぽ)。号は雪芹、芹渓(きんけい)、夢阮(むげん)など。遼陽(りょうよう)を本籍とする漢族ながら満州正白旗(清朝譜代の旗本)に属す家柄で、曽祖父(そうそふ)以降3代にわたり南京(ナンキン)の江寧織造(宮廷用織物製造所の長官)を世襲した名門の出身。とくに祖父寅(いん)(号は楝亭(れんてい))は当時一級の文人で、乳母兄弟たる康煕(こうき)帝の信任も厚かったが、父の代に至り、雍正(ようせい)帝の帝位継承問題に絡んで家産を没収され、曹家は没落した。年少の雪芹は零落した一族とともに北京(ペキン)へ移り、青年時には貢生(こうせい)(学生の官員)にもなったらしい。性は磊落(らいらく)、詩画が巧みで酒を好んだ。晩年は北京西郊に住んで貧窮し、友人の助言もあって小説『紅楼夢(こうろうむ)』の執筆に没頭したが、愛子を夭逝(ようせい)させた悲嘆のあまり、小説未完のまま自身も病没した。
[小山澄夫]
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出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…批判論文を採用するかどうかの手続問題から,馮雪峰(ふうせつぽう)らの《文芸報》編集部自己批判をも引きおこした。胡適の《紅楼夢考証》(新紅学)の系統を継ぐ兪平伯(ゆへいはく)は《紅楼夢研究》《紅楼夢簡論》などで,《紅楼夢》を色即是空を表す観念小説で,作者曹雪芹の嘆きの自伝とみなした。山東大学を卒業したばかりの李希凡,藍翎(らんれい)は,〈《紅楼夢簡論》およびその他について〉を書き,兪平伯はリアリズムの批判原則を離れ,明確な階級的観点を離れていると批判し,《紅楼夢》を当時の封建社会に対する反抗の書とし文学の分析に“人民性”を導入した。…
※「曹雪芹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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