月と鼈(読み)つきとすっぽん

精選版 日本国語大辞典 「月と鼈」の意味・読み・例文・類語

つき【月】=と[=に]鼈(すっぽん)

(月もスッポンも丸いという点では似ているが実は非常な違いがあるとの意から) 二つのものがはなはだしくかけへだたっていることのたとえ。
浄瑠璃蘆屋道満大内鑑(1734)三「お月(つキ)様と泥亀(スッポン)ほどちがふた」
[補注]一説に、「すっぽん」は「素盆(すぼん)」の誤ったものという。

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デジタル大辞泉 「月と鼈」の意味・読み・例文・類語

つきすっぽん

月もスッポンも同じように丸いが、比較にならないほどその違いは大きいこと。二つのものがひどく違っていることのたとえ。提灯ちょうちん釣鐘
[類語]雲泥の差提灯ちょうちんに釣鐘

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ことわざを知る辞典 「月と鼈」の解説

月と鼈

二つのものの隔たりが大きすぎて、比べ物にならないことのたとえ。また、釣り合いがとれないことのたとえ。

[使用例] 「あのひとなら大変な美人で、君なんかとは月と鼈ほどの違いで、不つりあいも甚しいじゃないか」とかなんとか誰かが申しましたので、「そんなことをいうんなら絶対にもらわない」とそれきり縁談をお流れにさしたとも伝えられております[夏目鏡子漱石思ひ出|1928]

[使用例] 「いや、やめておくんなはれ、恥かくのん、決まってますがな」「弱気やな。ニカちゃんらしゅうないで。ああいうおなは、嫌いか」「とんでもない。わいにはもったいないと思いまんねん。月とスッポン、ちょうちんに釣り鐘。話になりまへんがな」[難波利三*てんのじ村|1984]

[解説] 月とスッポンは、しいていえばまるいという共通性があるにしても、月は天にあって清らかで美しく、スッポンは泥の中をいずりまわり、食らいついたら放さないとされ、両者のイメージはまさに天と地の開きがあります。また、音韻の上でも、「つき」は格調高く、「すっぽん」には滑稽な響きが感じられます。
 ことわざは、話題となっている二つのものについて、極端な例を引いて、同列に論じられないことや、とうてい釣り合いがとれないことを強調しています。典型的には、縁談を辞退するときに、「提灯と釣り鐘」とともに用いられることが多かったといえるでしょう。縁談以外のもの(主として人物家柄など)の対比に使えますが、先方を月に見立てて敬意をはらい、自分や身内のことをスッポンに見立てて謙遜し卑下していうのが基本です。
 なお、ことわざの由来については、あまりに突飛な組み合わせなので、「月と朱盆(または素盆)」が転訛したとする説もあります。

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