有明・在明(読み)ありあけ

精選版 日本国語大辞典 「有明・在明」の意味・読み・例文・類語

あり‐あけ【有明・在明】

〘名〙
① 陰暦十六夜以後、月がまだ天にありながら夜の明けかけること。また、そのころ。→有明の月
※枕(10C終)七八「あり明のいみじう霧りわたりたる庭に、下(お)りてありくをきこしめして」
古今(905‐914)恋三・六二五「晨明のつれなくみえし別れよりあか月ばかりうき物はなし〈壬生忠岑〉」
俳諧続猿蓑(1698)上「うき旅は鵙とつれ立(だつ)渡り鳥〈里圃〉 有明高う明はつるそら〈馬莧〉」
③ 単に、夜明けをいう。明け方
※俳諧・ひさご(1690)「碁いさかひ二人しらける有明に〈怒誰〉 秋の夜番の物もうの声〈珍碩〉」
※花上集鈔(16C頃)上「公方蝋燭のありあけをだみすまいて、大酒飲でいらるる」
煤煙(1909)〈森田草平〉三三「不意に襖を開けて、下女が有明を下げに来た」
⑤ 香木の名。分類は真那賀(まなか)。香味は苦甘。六十一種名香の一つ。
⑥ 薫物の名。かおりは甘い。
※仮名草子・竹斎(1621‐23)上「有明、山人、黒方や、〈略〉数を尽して薫(た)かれたり」
楊弓(ようきゅう)、大弓で、銭を賭物(かけもの)にするとき、一五文という代わりに用いる隠語十五夜
随筆・一話一言(1779‐1820頃)一「賭的矢代の筈掛銭の異名、〈略〉十五を有明 十五やとも」
⑧ 「あさつき浅葱)」の女房詞
※女中詞(元祿五年)(1692)「一 あり明 あさつきの事」
※花壇綱目(1661‐73頃)桜「ありあけ 小輪、中輪あり」
[語誌](1)恋歌では男女が共に過ごした夜が明ける時分をいい、最もあわれ深い風情とされる。
(2)四季歌では、しばしば秋歌の題材となり、特に長月と結びつく例が多く、既に「万葉集」にも歌われている。俳諧では秋の季語で、月として扱われ、連歌では月の定座に詠まれることが多い。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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