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有機塩素殺虫剤

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栄養・生化学辞典の解説

有機塩素殺虫剤

 殺虫剤として使われる塩素を含む有機化合物

出典|朝倉書店
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

有機塩素殺虫剤
ゆうきえんそさっちゅうざい

殺虫剤を化学構造に基づいて区分したときの分類の一つ。有機塩素は塩素を含んだ有機化合物であり、有機塩素殺虫剤とは、その成分が害虫の神経伝達作用を阻害し神経系を抑制することにより殺虫効果を発現する殺虫剤の総称である。有機塩素殺虫剤には、1874年にツァイドラーOthmar Zeidler(1859―1911)により合成され、1939年にスイスのP・H・ミュラーらによって殺虫活性が発見されたジフェニルエタンを基本構造とするDDT誘導体、1825年にイギリスの電気科学者M・ファラデーにより最初に合成され1942年にイギリスのスレードRoland Edgar Slade(?―1968)らにより殺虫活性が発見された塩素化シクロヘキサンを基本構造とするBHC、および1948年ごろから開発された塩素化シクロジエンを基本構造とするドリン剤がある。ドリン剤とBHCを総称して塩素化シクロアルカン系殺虫剤とも称する。
 DDTの殺虫活性をみいだしたミュラーは、その功績により、1948年にノーベル医学生理学賞を授与されている。DDTの殺虫作用は、ピレスロイドと同様に昆虫の神経軸索に存在するナトリウムイオンチャネル(細胞外のナトリウムイオンを選択的に細胞内に取り込むタンパク質)に結合して神経伝達物質の異常放出を引き起こし、その結果、正常な神経伝達ができなくなり異常興奮を誘起することに起因する。
 BHCには7種の立体異性体が存在するが、γ(ガンマ)異性体のみが殺虫活性を示し、99%以上に精製したγ-BHCを異性体の発見者リンデンTeunis van der Linden(1884―1965)にちなんでリンデンとよぶ。γ-BHCとドリン剤の殺虫作用はほとんど同じであり、抑制性の神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA(ギャバ):gamma-aminobutyric acid)が結合するGABA受容体(塩素イオンチャネル)にγ-BHCやドリン剤がGABAとは別の部位に結合して、GABAの神経伝達作用を阻害することにより、神経系の抑制が効かなくなり、興奮することに起因する。フェニルピラゾール殺虫剤のフィプロニルもγ-BHCやドリン剤と同じ作用を示す。
 有機塩素殺虫剤は、哺乳(ほにゅう)動物に対し低毒性であり、安価に製造できたため、第二次世界大戦後の日本でも比較的早い時期から農業害虫やマラリアなどの媒介昆虫を含む衛生害虫の駆除に多量に使用された。しかし、これらの物質は、動物、作物そして環境中で分解されにくいため、食物連鎖による生物濃縮により高次の動物に蓄積し、その慢性毒性等が懸念され、日本では1970年代に使用禁止になった。DDT誘導体のなかには、女性ホルモンや男性ホルモンの作用を攪乱(かくらん)する内分泌攪乱活性を示す化合物も存在し、1990年代以降に問題となった野生動物の生殖異常の原因物質として疑われた。2000年(平成12)以降になって、日本でキュウリのようなウリ科作物の可食部(食べる部分)からドリン剤が検出され、ウリ科作物が、使用禁止前に処理した土壌中に残留するドリン剤を吸収し、可食部に蓄積することが明らかになった。[田村廣人]

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