扁形(へんけい)動物門条虫綱円葉目テニア科に属する寄生虫。体長2~3メートル、体幅5~6ミリメートル、片節数800~900個。頭節には4個の吸盤と22~32個の小さな鉤(かぎ)が環状に並んでおり、俗にカギサナダともよばれる。老熟片節の構造は無鉤条虫に似るが、子宮の分枝が少なく7~10対という点で異なる。
成虫はヒトを固有宿主とし、その小腸に寄生する。腸内で片節が切れ糞便(ふんべん)とともに排出されると、片節が壊れて卵が遊離する。この卵が中間宿主のブタに食べられると、その小腸で孵化(ふか)し、幼虫は腸壁に侵入し血流あるいはリンパ流にのって全身の筋肉や臓器に到達し嚢虫(のうちゅう)を形成する。これを有鉤嚢虫といい、乳白色大豆大で、袋の中には吸盤と小鉤を備えた頭節ができる。ヒトが有鉤嚢虫の寄生したブタ肉をよく加熱せずに食べると、小腸内で頭節が遊出し、吸盤と鉤で腸粘膜に固着して成長し、約3か月で成虫になる。一方、ヒトが卵を飲み込むと、小腸内で孵化した幼虫はブタの場合と同様に全身に運ばれ嚢虫を形成する。また、ヒトの腸内に成虫が寄生していると、片節が壊れて遊離した卵が小腸内で孵化し、幼虫が上記のように全身に運ばれることがある。
このように有鉤条虫ではヒトが固有宿主にもなり、また中間宿主にもなる。腸内に成虫が寄生してもほとんど無症状のことが多い。恐ろしいのは嚢虫寄生の場合で、皮下や筋肉に寄生するとアズキないしダイズ大の袋をつくり、脳、脊髄(せきずい)などに寄生するとてんかん様発作、けいれん、麻痺(まひ)などの重い症状をおこす。有鉤嚢虫症には的確な治療法がない。この条虫は中国、朝鮮半島、ロシア、東ヨーロッパ、インド、タイ、南アフリカ、中央・南アメリカに分布する。流行地ではブタ肉の生食を避けること、また人糞をブタに与えないことを心がける。
[町田昌昭]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
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