朝熊山経塚群(読み)あさまやまきようづかぐん

日本歴史地名大系 「朝熊山経塚群」の解説

朝熊山経塚群
あさまやまきようづかぐん

[現在地名]伊勢市朝熊町 岳

朝熊ヶ岳にある金剛証こんごうしよう寺本堂の裏山にあたり、標高五四〇メートル、境内との比高約八〇メートルのきようヶ峰の頂部にある。東方眼下に鳥羽湾島々が見え、愛知県渥美あつみ半島・知多ちた半島を遠望する。平安時代末から室町時代に造営された経塚群で、国指定史跡。一―三号経塚の出土品は国宝

明治五―六年(一八七二―七三)あるいは同一五年頃の暴風雨により「奉造立 如法経亀壱口事 右志者為現世後生安隠大平也 承安三年八月十一日 伊勢大神宮権禰宜 正四位下荒木田神主時盛 散位渡会宗常」とある篦描銘の陶製経筒(一号経塚)が出土した。昭和三四年(一九五九)の伊勢湾台風による倒木で、銅経筒、「散位大□□」銘の和鏡、青白磁合子が出土(二号経塚)したほか、平治元年(一一五九)の奥書のある法華経および般若心経・一切如来心中真言と随求陀羅尼の小呪、仏頂尊勝陀羅尼の計一三巻の経巻を納めた銅経筒が、線刻阿弥陀如来像鏡・線刻阿弥陀三尊来迎像鏡・線刻阿弥陀三尊像鏡・銅製提子とともに片口鉢を蓋とした甕に納められて出土した(三号経塚)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「朝熊山経塚群」の解説

あさまやまきょうづかぐん【朝熊山経塚群】


三重県伊勢市朝熊町ほかにある経塚遺跡。朝熊山の金剛證寺通称、朝熊山)北西、経ヶ峰の頂に位置する経塚群。1959年(昭和34)の伊勢湾台風による倒木で遺物が多数出土し、発掘調査の結果、約600m2の調査地から土坑や石囲い、山石で築いた小石室、瓦囲いなどの経塚が43基確認された。出土品には金属製経筒6、陶製経筒54、鏡類23、磁器類(合子(ごうす))・輪花皿17、陶器類(山茶椀・花瓶)、銅製品(小椀・水滴)、鉄製品、ガラス玉、瓦製多宝塔片、蓮台、檜扇(ひおおぎ)、扇などがある。遺物は平安時代末の紀年銘があるものや工芸的にもすぐれたものが多く、経塚として代表的なものである。出土品の多くは、金剛證寺の宝物館に展示されている。1966年(昭和41)に国の史跡に指定された。伊勢自動車道伊勢西ICから車で約20分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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