経筒(読み)キョウヅツ

デジタル大辞泉 「経筒」の意味・読み・例文・類語

きょう‐づつ〔キヤウ‐〕【経筒】

経塚に埋める写経を納めるためのふた付きの容器銅製円筒形のものが多い。

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精選版 日本国語大辞典 「経筒」の意味・読み・例文・類語

きょう‐づつキャウ‥【経筒】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 経典を納めて経塚に埋める円筒形容器。高さ二〇センチメートルぐらい、多くは銅製で、鉄、陶、石製もある。埋経目的、またはその願主名などを刻したものがあり、寛弘四年(一〇〇七)銘の藤原道長の金銅経筒は国宝に指定されている。
    1. 経筒<b>①</b>〈右 鳥取県倭文神社蔵,左 奈良県金峯神社蔵〉
      経筒〈右 鳥取県倭文神社蔵,左 奈良県金峯神社蔵〉
    2. [初出の実例]「経筒の花入にいけよ娑羅双樹〈如白〉」(出典:俳諧・桜川(1674)夏一)
  3. 花器一種。もとは経筒を花器に応用したが、現在はそれに模して作り、置生(おきいけ)、懸花生(かけはないけ)両用とする。
    1. [初出の実例]「床に、青地経筒に白ふよふ・白はぎ」(出典:松屋会記‐久重茶会記・慶長一三年(1608)七月三〇日)

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改訂新版 世界大百科事典 「経筒」の意味・わかりやすい解説

経筒 (きょうづつ)

経巻を収納するための筒形容器。とくに経塚埋納の紙本経を納めるために作られた直接容器をさすことが多い。各種の材料が使われているが,銅製品が圧倒的に多い。筒身は大部分が円筒形で,六角筒,八角筒もある。また数個の短い筒を積み上げて1本の筒形としたものもある。大きさは収納経典の寸法や数量に比例するが,大勢として平安時代は25cm前後,鎌倉時代は18cm前後,室町時代は10cm前後の高さである。筒身には銘文(収納経典名,願意,営造次第,営造者,年月日など)を記すことが多く,仏像,図像をあらわした例もある。蓋の形はきわめて多様で,単に筒身の一端を覆うだけの簡単なものもあれば,周囲を筒身の径より広くし,円形あるいは方形,花形などに作り,さらに端には瓔珞(ようらく)を垂下した華やかなものもある。撮(つま)みにも各種の宝珠鈕をはじめ,塔の相輪をかたどったもの,宝珠を火焰形で飾ったものなどさまざまで,仏像,ガラス壺を付した特殊な例もある。稀に鏡を蓋に利用した例があるが,鏡は底に使用する場合の方が多い。いずれも収納経典の護持を願ってのことであろう。底は多く平底であるが,台を付けた例も少なくない。この場合,台の表面に蓮弁や蓮葉の装飾を施すことがあり,台を亀形に作った特殊な例も発見されている。このように,その形状はきわめて多様で,なかには全体を宝塔そのものに近い形に製作した例もある。なお,箱形の直接容器は経箱というが,経筒の中に含める場合もある。一般に銅製品以外の形状にはそれほど変化は見られない。陶製品,磁製品には中国製の品が含まれているが,経筒として作られたものか,転用品であるかはまだ明らかでない。経筒の最も早い遺品は,1007年(寛弘4)の銘がある奈良県金峰山(きんぷせん)経塚出土品(藤原道長埋納品)で,以後各時代の遺品が全国から発見されており,銘文などから確実な製作年代を知ることができるものが多く,各方面の研究に利用価値の高い遺品である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「経筒」の意味・わかりやすい解説

経筒
きょうづつ

仏教経典の紙本(しほん)写経を納める筒形の容器。青銅製品が多いが、鉄、陶磁、石製品も存在する。形態は、円、六角、八角筒形のほか、宝塔、宝幢(ほうどう)形もみられる。長方形の箱形のものは経箱という。青銅製のものは銅板打物(うちもの)で鍍金(ときん)例のもの、鍍金のないものがあり、鋳造品もある。鉄製は鋳造品であり、陶磁器製には陶・青白磁品、石製品には滑石(かっせき)・ろう石製がみられる。大きさは、平安時代のものがそれ以降の例品に対して高く、鎌倉時代のものは全体としてずんぐりしている。

 そして室町時代になると小形になってくる。これらの経筒には、埋経の趣旨、埋納経典の名、年月日、願主名などが記されている例が多い。

[坂詰秀一]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「経筒」の意味・わかりやすい解説

経筒
きょうづつ

経巻を保護するための筒形容器。伝世品や,仏像の胎内,石塔などに納めたものもあるが,通常は経塚から発見されたものをいう。円筒形が多く,材質には銅,鉄,陶磁,滑石,竹などがあり,筒身には経塚営造者や経典の種類,営造の目的,年月日などが記されていることがある。

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