ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説
東京パラリンピック競技大会
とうきょうパラリンピックきょうぎたいかい
参加選手は 162の国・地域および難民選手団 EORの 4403人と過去最多となった。このうち国ぐるみでのドーピング(禁止薬物使用)が疑われたロシアは,違反歴や疑惑のない選手にかぎりロシア・パラリンピック委員会 RPCとして個人資格での参加が認められた。新競技にバドミントンとテコンドー,新種目に障害部位の異なる男女 4人による陸上競技のユニバーサルリレーなどを追加した 22競技 539種目が,首都圏を中心とする全 21会場で実施された。
国別金メダル獲得数の首位は中国(96個)で,メダル総数でも 1位(207個)だった。2位はパラリンピック発祥の地イギリス(41個)で,メダル総数でも同じく 2位(124個)。3位アメリカ(37個),4位 RPC(36個)と続いた。254人の選手を派遣した日本は,前回 2016年リオデジャネイロ大会の 0個から巻き返して,13個の金メダルを奪い,11位につけた。また獲得メダル総数 51個は過去最多の 2004年アテネ大会の 52個に迫るものだった。
健常者と肩を並べる記録を連発していた陸上競技男子走り幅跳び(義足・機能障害T64)のマルクス・レーム(ドイツ)が 3連覇を達成。レームは 2016年リオデジャネイロと2021年東京のオリンピック出場を希望していたが,義足が跳躍に有利に働かないという科学的証明ができなかったことを理由に認められなかった。
日本選手では,陸上競技男子400m(車いすT52),1500m(同)の佐藤友祈をはじめ,バドミントン女子(車いす。シングルスWH1,ダブルスWH1-WH2)の里見紗李奈,自転車ロード女子(切断・機能障害など。タイムトライアルC1-C3,ロードレースC1-C3)の杉浦佳子がそれぞれ金メダル 2個を奪った。競泳男子では,運動機能障害クラスの鈴木孝幸が出場 5種目すべてで表彰台(金 1個,銀 2個,銅 2個)に上り,すでに 6個のメダルをもつ 3大会連続出場の木村敬一は 100mバタフライ(視覚障害S11)で自身初の金メダルを,初出場の山口尚秀も 100m平泳ぎ(知的障害SB14)で自身のもつ世界記録を更新し,初の金メダルを獲得した。前回リオデジャネイロ大会のチームで銀メダルに輝き注目を集めたボッチャは個人(脳性まひBC2)で杉村英孝が金メダルを手にした。車いすテニスの第一人者,国枝慎吾は男子シングルスで 2大会ぶり 3個目の金メダルを獲得した。陸上競技女子マラソン(視覚障害T12)では世界記録保持者の道下美里が大会新記録で優勝した。新競技のバドミントンは若手の活躍で金メダル 3個を奪った。団体競技では,車いすバスケットボール男子で銀,車いすラグビー男子で銅,ゴールボール女子で銅メダルを奪った。
障害の程度によって参加種目を決めるクラス分けが,コロナ禍の影響で大会直前に行なわれ,急な変更を強いられて出場を断念したり不本意な成績に終わったりした選手もいた。選手や介助者,大会関係者の多くがワクチン接種を終えていたが,基礎疾患を有する選手の重症化などの懸念から,選手村で働くスタッフら関係者へのウイルス検査を従来の 4日に 1回から毎日に増やした。新型コロナウイルスに感染したパラリンピック関係者(選手・選手団役員,メディア関係者,委託業者,ボランティアなど)は 316人となり,選手村でのクラスター(感染者集団)発生はなかった。大会を観戦することで障害者や障害者スポーツへの理解を深める目的の学校連携観戦プログラムは,自治体によって参加か否かの対応が異なり,参加を表明した自治体の教育現場でも保護者が同意せず,欠席する児童・子供が相次いだ。
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